2024年4月18日(木)

石油を読む

2015年12月12日

 肝要な点。市場に売り手と買い手がいなければ価格が発見できない。成約情報が現れないと、相場はアヤフヤである。アナリストたちは「まぁ、相場はこの位のレベルではないかしらん」とか、日々発信しているだけだ。

 もうひとつ。フィリップとマークは、それぞれ違った相場見通しを持ってトレイディングに臨んだ。見通しの根拠とした情報が、異なっていたのだ。

 石油アナリストたちが毎日気にかけている市場が、別にある。

 それは先物市場。ニューヨークとロンドンが2大取引市場。とりわけ、ニューヨークNYMEX市場の取引では、大勢のトレイダーが取引所建物内部のフロアに群がって「オープン・アウトクライ方式」、つまり大声で、売りと買いの唱え値を叫び合って売買を成立させる。成約した価格は、刻々と、トレイディングボード画面に打ち込まれて、壁のスクリーンで公開される。一日の間に膨大な数の取引が成約してゆく。

オープン・アウトクライ(場立ち)
のほうが活気が出る

NYMEX(iStock)

 ところで、フィリップとマークの現物トレイドは1単位50万バレル、対してNYMEXでは1単位1000バレル。500分の1だ。1単位600万円相当の価額だが、先物市場だから値差分の損得を精算するのがルールである。相場が1%、すなわち50ドルの相場が、50セント上がると500ドル(6万円)分、損得が出るしくみだ。これなら石油事情をよく知らないプレイヤーも、マネーゲームとして参戦できる。

 NYMEX市場は独特で、相場の上げ下げに自分の資金を張って一日の生業とするひとびと(ディトレイダーといいます)が参加している。金儲けの世界に熱い思いを抱いた生身の人間たちだ。短髪に刈り込んだサイキックな若手もいれば、そばによるだに暑苦しい中年トレイダーも。この市場では、なぜ、オープン・アウトクライ(場立ち)で大騒ぎしているのか? それは簡単。そのほうが活気があって、絶対、面白いからに決まっている。
  
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