WEDGE REPORT

2015年12月18日

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桂木麻也 (かつらぎ・まや)

インベストメントバンカー

インベストメント・バンカー。カリフォルニア大学卒業・内外の投資銀行に20年超の勤務経験を有する。クロスボーダーのM&Aに造詣が深い。著書に『ASEAN企業地図』(翔泳社)『「選択肢」を持って「人生を経営」する』(ウェッジ)。

 「アジアでの売上倍増を今後5年の最重要戦略と位置付けます」

 「アジアでM&Aを加速させます」

 ここ数年、アジアでの成長を全面に押し出す企業が増えた。決算説明会に行けば、「猫も杓子も」と言いたくなるほど、アジアを連呼する経営者達の姿がある。実際、1990年代後半に発生した通貨危機が収束して以降、各国は政治的にも安定し、経済は順調に成長してきた。

 消費の牽引役である中間層も大きく育ってきている。加えて経済産業省のクールジャパン施策もあってか、アジアにおいて日本ブームが起きている。

 これを商機ととらえた企業が、勢いアジアを指向するのも道理である。コーポレートファイナンス、M&Aアドバイザリーを生業とする私であるが、アジア進出、買収ターゲットや提携パートナーの選定でアドバイスを求める企業が後を絶たないという、非常にありがたい状態が続いている。そんな中、2015年はアジア経済にとって歴史に残る年となる。ヒト・モノ・カネという経済資源のより自由な流通を目指し、ASEAN経済共同体が12月末に発足するのだ。これは、日系企業にとって、ASEANでビジネスを展開する上でもビッグチャンスである。

ASEAN進出にはパートナーが必要

 さて、突然話は変わるが、私は『ASEAN企業地図』(翔泳社)を上梓した。

 ASEAN加盟国の法制度や雇用慣行、宗教上の注意点を解説した書籍はあるが、本書はASEANでビジネスをする上で最低限知っておきたい企業集団を鳥瞰図で網羅したのが特徴である。日系企業との提携に積極的な企業グループや、現地での情報収集のコツも紹介しているので、これから事業提携やM&Aを目論む日系企業の担当者や意思決定層にとって、必ず役に立つコンテンツだと自負している。

 今回紹介したいのは、ASEAN各国の有力企業グループ(財閥)を率いるタイクーンの実像である。タイクーンは、「大物」や「実力者」を意味する英語である。「日本国大君」の略である「大君」に由来すると言われる。ASEANにおいては、ビジネスで大成功した大富豪やスーパービジネスマンを指すことが一般的だ。個人資産で数千億円を蓄財している者はざらで、中には1兆円を超える資産家まで存在する。彼らの実像を知り、どうアプローチをするかがASEANビジネス攻略の鍵といっても過言ではない。

出所:ASEAN企業地図
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タイクーンの類型

 タイクーンは、ビジネスマン、もしくはアントレプレナーとして様々なビジネスに携わっている。財を成すきっかけになった祖業だけでなく、多角化した多種多様のビジネスを手掛けており、壮大なコングロマリットを形成している。食品製造会社、デパート、コンビニ、銀行、不動産、放送局、携帯電話会社、エアライン、はたまたF1チームにヨーロッパのサッカーチームまで、そのビジネスの範囲はとてつもなく広い。

 タイクーンは、その保有するビジネスにおいて、独占的シェアを持っていたり、川上から川下までのサプライチェーンをコントロールしていたり、全国津々浦々をカバーする販売チャネルを有していたりする。そのような彼らの特性をうまく活用することで、理想的なアジアビジネスの設計が出来るかもしれない。

 アジアのタイクーンは、どのような出自・背景を持った人々なのであろうか。彼らの成功は、時代背景や個々の努力・運などの個別性が強いが、それでも次のような幾つかの類型がある。

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