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2016年1月14日

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小泉悠 (こいずみ・ゆう)

財団法人未来工学研究所客員研究員

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に『ロシア軍は生まれ変われるか』(東洋書店)。ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

突然の「水爆実験」

 1月6日、北朝鮮は突如として核実験を実施した。北朝鮮による核実験は2013年2月以来、ほぼ3年ぶりで、合計4回目(金正恩体制下では2回目)となる。

 これまでと異なるのは、北朝鮮当局がこれを「水爆実験」と呼んでいることだ。過去3回の核実験は、核分裂反応を用いる、いわゆる原子爆弾によるもの。一方、核分裂によって生じる熱と圧力を利用して核融合反応を起こす水素爆弾は、はるかに巨大な破壊力を発生させる。

 北朝鮮の主張は事実かブラフか、何故今なのか、国際社会への影響は…など今回の核実験は世界の注目を集めたが、ここではロシア側の反応を中心に紹介してみたい。後述するように、ロシアは北朝鮮の核開発に深い利害関係を有しており、その反応は決して小さなものではなかった。

「放射線環境に変化なし」

水爆実験に抗議するソウル市民

 北朝鮮で人工的な爆発が疑われる地震波が検知され、核実験が疑われると、ロシアのメディアは一斉にこれを速報した。北朝鮮北東部の核実験場はロシア国境からもほど近く、ロシアとしてはすぐ隣で起きた核実験である。また、核開発ではないが、2006年に北朝鮮が複数の弾道ミサイル発射実験を行った際には、コースを外れたミサイルのうち1発がロシアの排他的経済水域内に落下し、ウラジオストクの住民が北朝鮮領事館に抗議行動を行ったこともある。

 こうした環境もあって、事実だけを伝える速報が一段落すると、国営ノーヴォスチ通信は、「(北朝鮮に近い)沿海州の放射線環境に異常はない」という気象センターの談話を報じた。同センターによると、当時の沿海州の放射線強度は9マイクロレントゲン/時で普段よりも低いくらいであったという。いずれにせよ、陸続きの場所での核実験とあって放射能が心配されたのは自然な流れであろう。

 ロシア衛生・防疫庁も、全土の放射線モニタリング結果に異常は出ていないと発表している。

北朝鮮の「水爆」説には早くから冷淡

 北朝鮮が主張する「水爆」実験には、我が国や米国、韓国等で早い段階から疑問が投げかけられていた。韓国側の推定によれば、今回の北朝鮮の核実験は広島型原爆の半分にも満たない6キロトンほどの威力と推定されており、水素爆弾によるものとは到底考えにくい。核融合によって威力を増大させるブースト型原子爆弾の可能性もあるが、それにしても威力が小さすぎ、仮にブースト型原爆だとしてもそれも失敗したのだろうとされている。

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