WEDGE REPORT

2016年1月10日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

 トヨタ自動車の今年のCESでの記者発表は少々毛色の変わったものだった。最初に登場したのはトヨタ自動車販売上級副社長、ボブ・カーター氏で、どの自動車メーカーも目標に掲げている「コネクティビティ」「スマートモービル」などの理念を説明。その後会場での演説はTRI (Toyota Research Institute)のCEO兼トヨタへのテクニカルアドバイザーでもあるギル・プラット氏にバトンタッチされた。

FCV特許を公開する

FCVのコンセプトカー

 TRIは2015年11月に設立を発表されたばかりの研究開発組織で、基礎研究と製品開発のギャップを埋めるのが目的だ。最初の5年間にトヨタはTRIに10億ドルを投資、開発の目標はAIとロボティックス、つまり自動運転システムだ。オフィスはシリコンバレーとボストンにあり、MIT、スタンフォードという超一流大学との共同研究にも乗り出している。

 TRI設立以前にもトヨタは5000万ドルをMIT、スタンフォードの研究チームに出資しており、すでに30以上の研究プロジェクト、チームが生まれているという。1月から本格的な活動が始まるTRIは、創始メンバーとしてDARPAやグーグル、MITなどのロボティックカープロジェクト経験者を採用。自動運転システムへの本気度を見せた。

 しかしTRIの発表よりもトヨタが力を入れたかったのは、むしろ水素燃料電池車両(FCV)への取り組みではないだろうか。トヨタは自社が持つFCV関連の特許およそ5680を公開する、と発表した。

 「コネクティビティ」も「スマートモービル」も「自動運転」も、対象となるのはすべてEVだ。しかしトヨタのアプローチはEVの発電を水素燃料で行う、というもの。他のメーカーがEVのチャージステーション、継続走行距離などに言及しているのに対し、それを心配する必要がない、しかも水素燃料で得られた電力を家庭でも消費できる、というのがトヨタの主張だ。

 ただしFCVに関しては、長くホンダが業界をリードしてきた。ホンダにはすでにクラリティというFCVが以前から存在し、現在もリースで実際に顧客に提供している。家庭用の水素電力供給システムもホンダが先に開発、一部実用化しているが、FCVは追随するメーカーがほとんどない。そこにトヨタが参入した形だが、果たしてこの技術に本当に将来性はあるのか、という疑問がある。

 トヨタはプリウスプラグインハイブリッド、EV、RAV4EVなど、それなりのEVラインアップも持つ。これらを次世代向けに成長させ、IoTと結びつけるのか、それともFCVを柱にするのか、トヨタの方向性というものが見えてこない。

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