韓国の「読み方」

2016年1月13日

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、元ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

北朝鮮「政府声明」の読み方

 では、北朝鮮が発表した「政府声明」という公開情報から読み取れることは何だったのだろうか。声明のポイントを追ってみよう。

 まず分かるのは、「初の水爆実験」を強調している点である。

 声明は「歴史に特筆すべき水爆実験が最も完璧に成功したことで、朝鮮は水爆まで保有した核保有国の前列に堂々と立つことになった」と強調するとともに、「今回の水爆実験は、われわれの核武力発展のより高い段階である」と規定した。

 原爆の数百倍にのぼる破壊力を持ち、構造も難しい水爆を開発する段階に達したというアピールだ。北朝鮮では「金正日総書記の最大の功績の一つが核保有国の仲間入りをしたこと」とされている。5月の党大会で新体制を本格的に発足させようとしている金正恩第1書記としては、父を超える実績をアピールしたいのかもしれない。

 次に読み取れるのは、米国に対抗するための手段という核兵器の位置づけは不変だということだ。

 声明は、「米国をはじめとする敵対勢力の日を追って増大する核の威嚇と恐喝から国の自主権と民族の生存権を徹底的に守り、朝鮮半島の平和と地域の安全を頼もしく保証するための自衛的措置である」と核開発を正当化している。

 米国に対しては、「各種の経済制裁と謀略的な『人権』策動にしがみついて、われわれの強盛国家建設と人民生活の向上を阻み、『体制崩壊』を実現しようと躍起になって狂奔している」と批判してもいる。

米国への敵対心は「恐怖」の裏返し

 こうした米国に対する敵対心は、実は、恐怖心を背景にしたものである。そうした恐怖心を如実に示すのが、声明にある次の一節だ。

 「こんにちの厳しい現実は、自分の運命は専ら自力で守らなければならないという鉄の真理をあらためて明白に実証している。恐ろしく襲い掛かるオオカミの群れの前で猟銃を手放すことほど愚かな行動はないであろう」

 これは、リビアを念頭に置いた表現だ。米国との交渉で核放棄に応じた後、「アラブの春」の際の内戦で米欧に軍事介入されて悲惨な末路をたどったリビアのカダフィ政権は、北朝鮮にとっては反面教師となっている。カダフィ政権は「核を手放したから米国に対抗できなくなった」と受け止められているのである。

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