チャイナ・ウォッチャーの視点

2009年10月29日

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城山英巳 (しろやま・ひでみ)

時事通信社外信部記者

1969年生まれ、慶應義塾大学文学部卒業後、時事通信社入社。社会部、外信部を経て2002年6月から07年10月まで中国総局(北京)特派員。 外信部を経て11年8月から2度目の北京特派員。11年、早稲田大学大学院修士課程修了。現地での中国取材は10年に及ぶ。16年5月に帰国し、現在外信部記者。近著に『中国 消し去られた記録〜北京特派員が見た大国の闇』(白水社)、著書に『中国臓器市場』(新潮社)、 『中国共産党「天皇工作」秘録』(文春新書、「第22回アジア・太平洋賞」特別賞受賞)、『中国人一億人電脳調査』(文春新書)がある。14年に戦後日中外交史スクープで13年度「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞。

◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
◆更新日 : 毎週木曜
 

 中国ウオッチャーにとって「世界が中国を変えたのか、それとも中国が世界を変えたのか」というのは奥深い命題だ。

 2008年秋のリーマン・ショックに端を発した世界的な金融危機までは前者が大半の見方だっただろう。しかし、欧米諸国や日本が金融危機の泥沼からなかなか抜け出せない中、中国の7~9月の国内総生産(GDP)は前年同期比で実質8.9%増に上った。中国が世界経済を牽引する動力である現実はますます鮮明となり、今や世界の景気回復は中国頼みとなっている。

 こうした中、中国研究者や知識人の間では「中国モデル」の正当性を主張する声が強まっている。リーマン・ショックとは、市場至上主義の「米国モデル」が破綻したものとも言えた。一方、中国の金融危機ショックを最小限に食い止めた4兆元(約53兆円)もの巨額財政出動を、議会などの手続きを経ずに党・政府の一存で決定できる国家主導型の統治モデルこそ「中国モデル」の本質であり、これが8.9%成長の源泉となったのだ。

民主的手続き無視した4兆元もの財政出動

 「中国モデル」とは一体何であろうか。

 ある中国人政治研究者は、「権力を高度に集中させ、資源配分の主導権を握って開発を推し進める一方、社会統制を強化して政治的な安定を図る統治モデル」と解説する。

 4兆元もの財政出動の決定に当たり、共産党指導部は、全国人民代表大会(全人代)採決による手続きや国民的議論を経なかったというのは前述したが、こうした民主的手法を無視することで優先課題の決定スピードが上げられ、危機に断固とした対応を取ることが可能だ。社会不満が高まれば、警察・司法の力で押さえつけ、宣伝の力で都合の良い情報を一方的に流すこともできるため、「社会安定」を保つのにも最適だ。

 一方、選挙やそれに伴う政権交代が付き物の米国や日本のモデルは政治の不安定化を招きやすい。野党やメディアが政府に反対意見を突きつければ、延々と政策論争が続いて政策決定は遅れ、今回の金融危機でも迅速な対応が取れなかったのも現実だ。

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