2024年4月20日(土)

坂本幸雄の漂流ものづくり大国の治し方

2016年2月17日

 日本企業は権限委譲が苦手だ。アメリカでは、経営陣だからという理由だけで、製品開発の方向性を決定するような会議に参加することはない。実際に研究・開発を担当する者や市場調査の担当者が会議に参加し、どのように競争力のある製品を開発していくかを議論する。

役職者だけで集まる会議は見直す必要がある(iStock)

 一方、日本では、経営陣やそれに近い立場の部長が会議で方針を決め、職場に戻って担当者に「会議で決まったからこういった製品を開発してくれ」と伝える企業が多い。研究・開発の動向や市場ニーズを把握している担当者が集まって方向性を決めたほうが合理的だ。役職者だけで決めると、間違った方向に進んでしまうことが多い。

 かつて私が勤めていた外資系のテキサス・インスツルメンツ(TI)では、担当者が会議に出ていたが、NEC、日立製作所、三菱電機の社員が集まってできたエルピーダメモリでは、経営陣に近い部長が開発会議に出る仕組みだったので、社長に就任してすぐにTI型に改めた。会議に限った話ではないが、日本企業は権限委譲について改めて見直す必要があるだろう。

 一方で、トップの責任と役割についても考え直すべきことが多い。以前から私は、日本企業の「いらないもの」の代表が経営企画部門だと思っている。財務や法務など管理系の人たちが集まって、市場や技術の最新動向と遊離したところで、会社の主導権を握る。外国の企業ではこれに相当する部署を見たことがない。会社の大きな方向性を「決める」ことは、トップのもっとも重要な役割だからだ。


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