WEDGE REPORT

2016年1月29日

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家族写真のようなストーリーを紡ぐ写真家

 鳥飼氏の肩書きは、掲載される媒体によって様々である。「スポーツカメラマン、フォトジャーナリスト、ドキュメンタリー写真家など、呼ばれ方はその時々で変わるのですが、特にこだわりはありません。個人的にはヒューマンストーリーを追っているのかな、と思っています。映画だとそういうジャンルがあるんですが、写真の世界ではあまり耳にしないんですよね」

 そんな彼女が好きな写真は、どこの家庭でも撮られているような家族写真だという。「私、家族写真が好きなんですよ。玄関の前で撮るような家族写真ですね。それって、たとえピンぼけしていても、誰かが目をつぶっていても、そこに家族がいるだけで、家族の宝物になる。亡くなる人もいるし、生まれてくる命もある。人数の増減や玄関の老朽化など映り込むものから、当事者にしか分からないような話が紡ぎ出てくる。それを見るだけで思い出せるものがある。私は、そんな家族写真のような空気観を撮りたいと思っています。

 2008年にカンボジアで学校を作っている方と現地の小学校へ行ったことがあるんです。行く前に楽しみにしていたのは、カンボジアの人たちを見て、私はどう思うんだろうっていう心境の変化でした。その時に感じたのは、意外にも海の向こうの人の力になりたいというよりも、自分の周りの人を大切にしようってことだったんです。

カメラを趣味で始めた頃に出かけたカンボジア。この時に感じた「自分の周りの人を大切にしたい」という思いが、写真を通してヒューマンストーリーを紡いでいきたいというフォトグラファーとしての表現につながっている(撮影:鳥飼祥恵)

 それが今につながっていて、自分の身近にある心を動かされるものを表現していきたいと思っています。写真を撮る使命感を得られず、悩んだこともあります。でも、きっと写真を撮っていくうちに、『これが私の使命なんだ』と気付ける日がくるのだと信じています。今回のアンプティサッカーの写真でもそうですが、私の撮った写真で人の心が動くことがあれば嬉しいな、とは思っていますが、人助けみたいな気持ちはないんですよね」

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