BBC News

2016年1月29日

世界保健機関(WHO)は28日、米州で今年、300~400万人がジカウイルスに感染する恐れがあると見通しを明らかにした。蚊が媒介するジカウイルスは、感染してもほとんどの人は発症しないが、小頭症の赤ちゃん出生との関連が懸念されている。

WHOのマーガレット・チャン事務局長はWHO理事会に対して、ジカウイルスの感染が「緩やかな脅威から、非常に懸念される状態に拡大した」と報告。「懸念と不安が非常に高まって」おり、「たくさんの疑問がある。早急に答えが必要だ」と事務局長は述べ、「爆発的に広まった」ウイルスに対応するため「緊急対策チーム」を設置したと明らかにした。

WHOは2月1日に緊急委員会を開き、地球規模の危機として扱うべきかを検討する。

「国際社会としてどの程度懸念するのが適切か、そして影響下にある国々などでとるべき対策について、委員会の助言を求める」と事務局長は説明した。

WHOが前回、国際的な危機を宣言したのは、西アフリカでエボラ感染熱が集団発生した時で、1万1000人が死亡した。

WHOによると、ジカ熱被害が最も大きいブラジルでは50万人~150万人が感染した可能性があるという。

ブラジルでは昨年10月以来3900人近い小頭症の赤ちゃんが誕生している。さらに、神経の難病ギラン・バレー症候群の発症も増えている。

こうした疾患とジカウイルス感染の関連について、WHOのチャン事務局長は「関連は未確認」だが、「強く疑われる」ため「非常に懸念される」と憂慮を示した。

事務局長はさらに、「今年予測されるエルニーニョ現象によって、多くの地域で蚊の生息数が増える見通し」のため、感染はさらに拡大する恐れがあると警告した。

ブラジル北東部レシフェで取材しているBBCのデイビッド・シュクマン記者は、小頭症の多発に医療機関は「押しつぶされている」と報告する。診察する小頭症の症例がこれまで年間平均5件だったのに、ここ半年の間で300件も診たという病院もあるという。

ブラジルでは今年夏、主要都市リオデジャネイロで夏季オリンピック・パラリンピックが開かれる。このため国際オリンピック委員会(IOC)のトマス・バッハ会長は、大会を守るための措置に取り組んでいると述べ、選手や観客の安全を守るため、IOCとして近く提言を発表すると説明した。

WHOの報告に先立ち、米医学誌「米国医師会雑誌(JAMA)」では医師たちが、ジカウイルスが「爆発的な集団感染になる可能性がある」と指摘し、エボラ熱の際にはWHOが速やかに対応しなかったせいで数千人の命が失われたと批判していた。

ワクチンは

こうしたなか、米政府は2016年末までに人間を対象にしたワクチンの臨床試験を開始したいと見通しを示している。

米国立衛生研究所(NIH)によると、効果が期待される2種類のワクチンを開発中だという。 NIH傘下にある米国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長によると、ひとつは実験段階にあるウエストナイル熱ワクチンをジカウイルス用に作り替えたもので、2016年末までには人間での臨床試験が開始される見通し。製薬会社との協議はすでに始まっているが、ワクチンが一般に広く提供できるようになるには、数年かかるという。

他方で米疾病対策センター(CDC)のアン・シュシャット博士によると、米国では31人の感染が確認されている。いずれも感染地域から渡航してきた人だという。

ホワイトハウスのジョシュ・アーネスト大統領報道官は、米政府はこれまで「あり得る脅威に対して適切な対応をとってきた」と説明。「ここ米国では今現在、蚊が媒介する伝染病が拡大する可能性はとても低い。北米の1月の気温は蚊の生息には適さないからだ。しかしもちろん状況は変わる」。

WHOの米州支部「汎米保健機関」(PAHO)代表のカリッサ・エティエンヌ博士は、先天性異常や神経疾患とジカウイルスとの関連は確認されていないとした上で、「神経や身体の異常をもって赤ちゃんが生まれてきたり、人が麻痺状態に陥ったりする危険をこれ以上容認できない」と述べた。

(英語記事 Zika virus: Up to four million Zika cases predicted)

提供元:http://www.bbc.com/japanese/35436022

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