2024年4月20日(土)

World Energy Watch

2016年2月9日

投資は成長の機会だが

 潘基文事務総長は投資家を前に、「パリCOP21からの強い流れを受け投資家はクリーンエネルギーの成長の機会を掴むべき」と訴え、「持続可能なクリーンエネルギーは成長しているものの、経済不況と人類に害を与える引き金になる過度な温暖化を防ぐためには、まだ不十分であり、投資が極めて重要」と訴えた。

 原子力も再エネも大きな投資を必要とするが、これらの分野への投資が収益を産み、企業の成長に結びつくか、不透明な環境だ。そんななかで投資が集まるのだろうか。

 原子力への投資は、中国、インド、英国、米国、東欧などで行われているが、電力市場が自由化されておらず規制が行われている市場、あるいは英国のように政府が長期に亘り発電された電気を買い取る保証を行う制度がある国に限られている。少なくとも40年以上に亘り収益を確保するためには、自由化され電気料金の保証がない市場での投資は困難だ。

 日本は4月から電力市場において小売が完全に自由化される。政府は2030年に原子力の発電比率を20~22%にする目標を持つが、適切な制度がなければ投資家は現れない。IEAが必要とする表-1の世界の原子力発電の比率も十分な投資が確保できなければ絵に書いた餅だ。

 再エネへの投資にも困難な状況が待ち受けている。システムコストのため需要家のもとに届く段階で価格が高くなる再エネには、制度的な支援が欠かせない。それは、固定価格買い取り制度、あるいは電力の卸市場で再エネから発電された電気を売却した場合にプレミアムが支払われるフィードインプレミアム制度などだ。

投資家は登場するのか

 制度による支援は電気料金上昇の形で現れる。欧州の多くの国は再エネに対する支援制度を大幅に見直し、電気料金上昇を防ぐ政策に転換している。制度見直しの結果は、再エネ先進国と言われたドイツ、スペインなどでの設備投資の急減だ。

 投資家に有利な制度が導入されたスペインでは、風量に恵まれた風力発電設備への投資が大きく増え、設備容量が2300万kWまで達したが、2012年から補助制度の見直しが続いた結果、2015年の風力発電設備新規導入量はゼロになった。再エネへの投資を増加させようとすると、Ceresも指摘するように政府の支援が前提になる。しかし、支援は電力料金あるいは税金で負担するしかない。

 原子力も再エネも大きな投資が必要とされ、企業に成長の機会を提供するが、投資は難しい制度設計が前提となり、電気料金などの形で需要家が負担することが必要になるかもしれない。成長の機会と考える投資家がどの程度登場するのだろうか。


  
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