山陽新幹線各駅停車の旅

姫路駅 ~白鷺(はくろ)の城に抱かれる街~
(前編)

旅、散歩、お菓子、手みやげ、クラシックホテルや建築など、女性が好み憧れるモノやコトを主な題材に、書籍や雑誌に執筆。食・店・風景・人、その土地ならではの魅力を再発見するのが得意。まち歩きや手みやげ講座など、カルチャースクールの講師もつとめる。著書は、『東海道新幹線各駅停車の旅』『電車でめぐる富士山の旅──御殿場・富士宮・富士吉田・清水へ』(ともにウェッジ)など20冊以上。 http://www.loule.net/
『東海道新幹線各駅停車の旅』
見て、歩いて、食べて、それぞれの街を存分に味わいつくした、全17駅
<東海道新幹線各駅の情報が満載です>
東京駅、品川駅、新横浜駅、小田原駅、熱海駅、三島駅 新富士駅、静岡駅、掛川駅、
浜松駅、豊橋駅、三河安城駅 名古屋駅、岐阜羽島駅、米原駅、京都駅、新大阪駅
『電車でめぐる富士山の旅──御殿場・富士宮・富士吉田・清水へ』
4つの登山口と富士山を美しく望める町を起点にした、 登らずに富士山を味わう旅
避暑地別荘の面影が残る御殿場、浅間大社の門前町である富士宮、
富士山信仰の拠点の富士吉田、富士山と駿河湾の景勝が望める清水へ……。

山陽新幹線各駅停車の旅

既刊『東海道新幹線各駅停車の旅』では、東京駅から新大阪駅まで全17駅を旅しました。続いて旅に出たのが、山陽新幹線沿線。全20駅、20通りの旅の紀行。その土地ならではの食べものや、みやげ、菓子をこよなく愛する著者のまなざしを、写真とともにお楽しみください。

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エッセイ:白鷺城も富士山も、私たちのよりどころ

 姫路駅の北口から、姫路城の大手門に向かって一筋にのびる大手前通り。数年前に家族で姫路を訪れたとき、「この道、日本の道100選に選ばれているらしいよ」と父と母に伝えると、へーっと大いに感心していた。「登山道と同じだね」とも。登山道とは静岡の実家近くを走る、富士山スカイラインの地元での別称。富士山の中腹へと続く道は、すぐそばで暮らす私たちの誇りだった。

 日本では、道も城も滝も水も、「3大」とか「100選」とか、数を決めて選るならわしが根付く。そう聞くと、ありがたみがぐっと増すのか。姫路城の美しさは、数宇の冠に頼らずとも誰もが感じ入るだろう。姪っ子は「これまで見たお城の中でも、“本物”という気がする」と、頬を赤らめ雄姿をじっと眺め入る。

 そう、姫路城は400年の歴史で一度も戦火に見舞われず、大改修を重ねながら、築城の威容を残す不戦の城。日本に現存する最大の城郭建築で、世界的にも類のない壮烈さ。白漆喰総塗籠(しろしっくいそうぬりごめ)という方法で外壁を塗り籠め、屋根瓦の継ぎ目にも白漆喰が。天守群は翼を広げた白鷺にたとえられ、「白鷺城(はくろじょう・しらさぎじょう)」とも呼ばれる。別名の由来は、城の周りに白鷺が住んでいたからとか、黒い板張りで「烏城」(うじょう・からすじょう)と呼称される岡山城との対比という説もあるが、白というのに深い意味があるらしい。現在の形で姫路城を築いた安土桃山時代の武将・池田輝政は、武による統治ではなく、美による威嚇を重んじた。ゆえに城主としての威厳を示すのに、輝くような白に執心したという。

 てんてんと彫刻作品が配される大手前通りの東西の歩道を歩きながら、車道の信号が赤に変わるのを見計らう。横断歩道が青い光に照らされる束の間、小走りに白線を進み、道の真ん中で立ち止まる。1秒、2秒、3秒……。数秒だけ、雅やかな白鷺の城と正面から向かい合う。

 「姫路の人は、お城を中心に街のことを話すんです。静岡でいう富士山のようなものですね」

 と、私のアシスタントのまきこさんが言った。まきこさんが生まれ育ったのは姫路近く。上京するまで姫路城はいつでも暮らしの中心にあって、お城のあっちとかこっちとか、標だったと教えてくれた。

 どの町やどの人にも、まきこさんにとっての姫路城や、私にとっての富士山のように、誇らしくも切なささえ呼び寄せる、よりどころがあるのだろう。山や海や木や、駅や商店や学校や。土地の人の心の支えを感じる旅を続けていきたい。

 雪をかぶった冬の富士山も、羽を休める白い鳥を思わせる。姫路城を見上げるうちに、不意に故郷が恋しくなった。

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「山陽新幹線各駅停車の旅」

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