「投降か餓死か」迫るシリアロシア連合軍
プーチンとオバマでは役者が違う

人道危機を放置するアメリカ


佐々木伸 (ささき・しん)  星槎大学客員教授

共同通信社客員論説委員。ベイルートやカイロ支局長を経て外信部副部長、ニュースセンター長、編集局長などを歴任。

WEDGE REPORT

時間軸の長い視点で深く掘り下げて、世界の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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シリア最大の都市にして内戦の激戦地である北部のアレッポがロシア軍の猛爆撃の支援を受けた政府軍の攻勢の前に完全に包囲されつつあり、住民らの大脱出(エクソダス)が続いている。脱出した住民らは隣国トルコへの入国を許されず、厳寒の中、国境沿いに野営し、新たな人道危機にあえいでいる。

アレッポからトルコ国境に逃れてきた子どもたち。世界は彼らを見捨ててはならない(Getty Images)

さらに100万人の可能性も

 トルコ国境に近いアレッポはかつて、300万人を超える人口を持つシリア最大の商業都市として繁栄していた。しかし5年前に内戦が勃発し、2012年以降、反体制派と政府軍がそれぞれ市を分断支配して激戦地となってきた。一時は反体制派が完全支配する直前までいったが、ロシアが4カ月前に軍事介入し、反体制派への爆撃を開始してから形勢は逆転した。

 政府軍は1月末から、ロシア軍の猛爆撃の支援の下、同市の奪還作戦を始め、南部、東部から包囲網を縮め、2月3日、北部の周辺の村々を制圧して市とトルコの戦略的な補給ルートを遮断、締め付けを強めた。市の西部にはまだ政府軍が展開していないが、完全包囲は時間の問題と見られている。

 政府軍の奪還作戦には、イランの革命防衛隊や、イランの影響下にあるレバノンの武装組織ヒズボラ戦闘員、イラクとアフガニスタンのシーア派民兵軍団など数千人も加わっている。政府軍は市を完全に包囲して孤立させ、反体制派に「投降か、餓死か」の二者択一を迫る作戦だ、とされる。

 ロシア軍の空爆は「これまでで最も激しいものだった」(反体制派戦闘員)といわれ、3日から4日の24時間で200回を超える爆撃が加えられた。反体制側は最後まで戦うと強気の姿勢だが、反体制派の一翼として戦闘しているアルカイダ系の過激派「ヌスラ戦線」は支援を求める緊急アピールを出した。

 反体制派が支配している市の西部地域には約35万人の住民が残っていたが、ロシア軍の無差別爆撃と政府軍の攻撃に耐えきれず、続々と脱出。現在3万人がトルコの国境の町キリスのシリア側にたどり着き、なお5万人がこの後に続いているという。トルコは住民らの越境避難を認めず、シリア側に食料や毛布などを配布している。

 トルコのクルトルムシュ副首相によると、最悪の場合、アレッポやその周辺地区からさらに100万人が脱出してくる可能性がある、という。仮にアレッポが包囲され、政府側に陥落することになれば、反体制派にとっては壊滅的な打撃となるだろう。

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佐々木伸(ささき・しん)

星槎大学客員教授

共同通信社客員論説委員。ベイルートやカイロ支局長を経て外信部副部長、ニュースセンター長、編集局長などを歴任。

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