2024年4月19日(金)

WEDGE REPORT

2016年2月15日

政治は戦場で決まる

 米情報機関を取り仕切るクラッパー情報長官は先般の議会公聴会で「プーチンはロシアの領土を拡張するという意味で、独裁者スターリン以来初の指導者」と述べ、シリア介入がうまくいっていることにプーチン氏が自信を深めていることを明らかにした。

 これに対してオバマ大統領のシリア政策は迷走が目立ち、プーチン氏に好きなようにやられてしまっているとの印象が強い。アサド政権が化学兵器を使用したらミサイル攻撃すると脅しておきながら、実際に使用が明らかになっても攻撃しなかったし、5億ドルもかけてシリアに米肝いりの対IS部隊を創設しようとしたが、これもあっという間に破綻した。

 反体制派により強力な武器支援を、というクリントン元国務長官らの進言に耳を貸さず、またシリア軍機による樽爆弾攻撃を阻止するため「飛行禁止空域」の設置を求めた側近やトルコの助言も拒否した。仮にイラクでも実施した「飛行禁止空域」を設置していれば、ロシア軍のこうした大規模な介入は招かなかっただろう。

 オバマ氏はイラクとアフガニスタンという2つの戦争から米軍を撤退させることに集中したあまり、今日の混乱とISの台頭を招いたという指摘は説得力を持っている。24時間で反体制派を200回以上爆撃するようなロシアと違い、米国のIS攻撃も本腰を入れたものにはなっていない。

 オバマ政権はシリア内戦の「交渉による解決」を目指したが、「政治は戦場で決まることをロシアが示しつつある」(ベイルート筋)というのが現実だ。「ロシアやアサド政権を支援してきたイランを勝利者とする“内戦の終わりの始まり”だ」(アナリスト)。停戦合意がうまく作動するのかどうか、数日のうちにはっきりするだろう。

  
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