2024年4月18日(木)

報道にはすべて裏がある

2016年2月16日

 ともあれ、北朝鮮がたび重なる核実験とミサイル発射によって、着実に核保有国としての既成事実化を進めているなかで、米中ともにアテにならないから韓国も核武装して対抗すべきというのが、朝鮮日報はじめ韓国保守層のなかで高まっている主張なのだが、読んでいて「?」と思うのが、日本についての記述だ。

 「日本のように、核武装はしていないが決心さえすればいつでも核兵器を作る潜在能力を有する『核武装選択権(Nuclear Option)』戦略も前向きに検討する必要がある」(1月17日付同紙コラム)

 「これまでに核兵器のあらゆる要素(濃縮ウランから核実験のシミュレーション、運搬手段に至るまで)を手に入れ、今は分解しているものの、ひとたび有事となれば『結合』すればいいだけという段階にまで至っている日本は、隣の不運の陰でにたにたと笑っている」(2月7日付同紙コラム)

これまで「朝鮮半島の非核化」を訴えてきた韓国政府

 韓国では日本は核武装するだけの能力を有し、有事となればいつでもそれを兵器として使えると思われているのだ。最大手紙でそんな議論が行われていることに日本人として違和感を感じざるを得ないが、日本のプルトニウム保有量は国内外に47トン。長崎級原爆の5000発分!に相当する。日本の外からはそんな疑念を持って見られてしまうのであろうか。

 朴槿恵大統領は1月13日の記者会見で、韓国国内で議論される核武装論について「韓国も戦術核を持つべきではないかという主張については十分理解する」としながらも、「これまでわが国が主張し続けてきたこと、国際社会との約束があるため、それ(=核武装)は約束を破ることになる」と述べて否定的な見解を示した。

 韓国は北朝鮮による核開発を非難し、「朝鮮半島の非核化」を訴えてきた。核武装の道を歩むことは、そうした主張と矛盾することになるばかりか、核兵器不拡散条約(NPT)に加盟する韓国には国際社会からの制裁と孤立も待っている。

 よもやこんな議論が韓国国内で大きな影響力を持つに至ることはないと信じたいが、外交の破綻が露になりつつあるだけに、韓国がどこに向かうのか、注視だけは怠らないようにしたい。
 

  
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