BBC News

2016年2月17日

米連邦最高裁の最古参で最も保守的だった判事、アントニン・スカリア判事が13日朝、狩猟に出かけたテキサス州南部で死亡しているのを発見された。79歳だった。睡眠中に亡くなったとみられている。その訃報が伝わるやたちまち、後任選びの手続きをめぐり激しい論争が巻き起こった。

オバマ米大統領は自分が後任を指名すると表明しているが、大統領選の共和党候補たちは、選挙が終わるまで人選を保留するよう呼びかけている。

スカリア判事が亡くなる前は、最高裁判事9人は5人が保守派、4人がリベラル派で、判決を多数決で決める際には保守派が優勢だった。このため最高裁はこれまで、気候変動や移民受け入れに関するオバマ政権の取り組みにブレーキをかけてきた。

スカリア判事の死去によって保守とリベラルが4対4で拮抗した今、米国で最も強力な決定機関のひとつでどちらがより強い影響力をもつかにつながる人事は、米大統領選と同じくらい対立の激しいものになるとみられる。

スカリア判事は1986年、当時のロナルド・レーガン大統領に指名された。

オバマ大統領は「30年近く、スカリア判事は裁判官席において並外れた存在感を示していた」とコメント。「法曹家として稀有な思考力」と「鋭いウイット」の持ち主だったと評価した。

主立った民主党有力者からは、新判事を早急に決めてほしいというコメントが相次いでいる。

オバマ大統領は「しかるべき時に」後任を指名すると表明。大統領選の有力候補、ヒラリー・クリントン前国務長官はオバマ氏が「2017年1月20日まで合衆国の大統領なのだから、共和党が気に入るかどうかはともかく、それが事実だ」とツイートした。また民主党候補争いでクリントン氏と拮抗しているバーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出)も「早く決めよう」と促した。

ただし、大統領が指名する最高裁判事の候補は、上院が承認しなくてはならない。現在の上院は共和党が多数のため、オバマ氏が選んだ候補の承認を今年11月の大統領選以降に引き伸ばす可能性もある。

共和党候補指名レースで支持率トップの実業家ドナルド・トランプ氏は、上院の共和党は「遅らせて、遅らせて、遅らせる」べきだと述べた。対抗馬のテッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)は、最高裁での影響力を共和党が「一世代も」失うような事態は避けなくてはならないと、やはり次期大統領が選ぶべきとの考えを示した。共和党重鎮のミッチ・マコネル上院院内総務は「新しい大統領が決まるまで」後任を選ぶべきでないとコメントした。

大統領は自分の指名を上院が尊重するよう期待すると述べ、上院が「その人物を公平に審議し、適切なタイミングで投票する」よう求めた。

スカリア判事は1936年、ニュージャージー州トレントンで生まれた。イタリア系米国人として初の最高裁判事だった。

合衆国憲法について、意味は固定されており時代とともに変わったりしないという保守的な法哲学を抱く、いわゆる「原意主義」の主要論者だった。

2008年には、個人が短銃を所持する権利を認めた重要判例「ワシントンDC(コロンビア特別区)対ヘラー氏」で、法廷意見を執筆した。

歯に衣着せぬ発言で知られたスカリア氏は、一貫して人工中絶と同性愛者の権利拡大に明確に反対し、しばしば強烈な反対意見を書いた。

多数意見の場合は、企業利益を重視し、死刑制度を強力に支持する一方、表現の自由については他の保守派判事たちとは一線を画すことが多かった。

ユーモア感覚と豊かな表現力でも有名で、オバマ大統領の医療保険改革案を擁護しようとする動きを「jiggery-pokery(いかさまのからくり)」や「pure applesauce (まったくのたわごと)」と呼んだ。

連邦最高裁は後任が空席の間も、審理を継続する。裁判日程には人工中絶の権利に関する重大事件の判決も予定されている。

米連邦最高裁の判事の任期は終身。大統領が指名し、上院が承認する。

民主党の大統領が指名したルース・ベイダー・ギンズバーグ判事(82)、ソニア・ソトマイヤー判事(61)、スティーブン・ブライヤー判事(77)、エレナ・ケーガン判事(55)の4人が、リベラル派とされる。

共和党の大統領が指名したジョン・ロバーツ長官(61)、クラレンス・トーマス判事(67)、アンソニー・ケネディー判事(79)、サミュエル・アリート判事(65)の4人が、保守派とされる。

オバマ大統領の任期満了まであと11カ月という時点で、スカリア判事は亡くなった。このため上院の共和党は、次の大統領が2017年1月20日に就任宣誓するまで何としても後任の承認を引き延ばすよう、保守派から激しい圧力をかけられることになる。

そのためには上院公聴会の審議を遅らせ、あらゆる候補について本会議の投票を遅らせるため、「フィリバスター(長時間演説)」などの議事妨害が繰り返されることもあり得る。

そうすることによって、最高裁の1票差の保守優勢を維持する候補を共和党から出る次の大統領が選ぶというのが、保守派の期待だ。

最高裁判事を上院が承認するまでにこれまで最も長くかかったのは125日間だった。

提供元:http://www.bbc.com/japanese/35576244

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