世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年2月26日

 ジョージワシントン大学のサター教授が、1月20日付PacNetで、オバマの残りの任期において米国の対台湾政策に変化はなく、その後は、誰が新しい大統領に選ばれるか、新大統領の外交アジェンダの中で台湾問題がどの程度の重要性を与えられるかによる、と論じています。要旨は次の通り。

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“実利的な理解”放棄でも建設的交流促してきた米

 中国は蔡英文と民進党政府に強い猜疑心を持っている。中国は1992年コンセンサスの「一つの中国」の概念を維持するよう台湾に要求しているが、蔡英文の対応はまだ明確ではない。中国側の要求に応えない可能性はある。

 オバマ政権は馬英九の政策を支持してきた。それが台湾海峡に平和と安定をもたらし、米国の利益を守る最も適切なやり方であると考えたからだ。最近の米国内での中国に関する論争の激化やオバマ政権の中国政策の硬化にもかかわらず、オバマの残りの任期において、米国の対台湾政策に変化はないだろう。その後は、誰が新しい大統領に選ばれるか、新大統領の外交アジェンダの中で台湾問題がどの程度の重要性を与えられるかによる。

 オバマ政権は、ブッシュ政権と同様、中国に対して穏健な態度をとってきた。米中は、90年代から、現実的な理解に立って「積極的な関与」を強調し両国間の「差異」を過小評価してきた。米中は、この積極的関与から利益を得てきた。相互依存の高まりにより相手に対する圧力は自分も傷つけることになるからだ。習近平は、この「実利的な理解」を放棄した。その結果、冷戦終結後、最も厳しい中国政策に関する議論となり、「リバランス政策」を含むオバマ政権の政策転換となった。しかし、オバマ政権の台湾がらみの対中政策に、変化あるいは硬化は見られない。総統選後も、米国政府は、中国と台湾双方に対して、挑発を避け、建設的な交流をし、平和と安定にダメージを与えないように妥協や合意をはかるように求め続けるだろう。

対台湾政策の行方かかる米大統領選

 馬英九の親北京路線の終焉は、米国内の対台湾政策修正派を勇気付けた。彼らの議論は以下の三種類に分けられる。①台湾のTPPへの加入を支持し、閣僚級の訪台を増やし、より多くの先進兵器を台湾に売るべし。②中国の拡張主義に対抗して、中国の近隣諸国と協力する明確な戦略を持つべし。中国に対する「遮断」も含まれるべきで、台湾はいわゆる第一列島線の中心に位置し、この計画の中心となる。③習近平の反米的行動の実践のコストを高めるために、台湾に対するより大きな支持を示すべし。上記①、②の措置も併せて米国の利益に対する挑戦がタダでは済まないこと、中国にとり、かくも重要な台湾問題にとり不利になることを悟らせるべし。

 これらの考え方がどの程度支持され米国の台湾政策が変更されるかは、状況いかんによる。ほとんどの共和党大統領候補者、それに、ヒラリー・クリントンも、中国を含む対外的な挑戦に対しては強い姿勢で臨む意思を表明している。どうなるかは大統領選挙の結果による。同時に新大統領にとり台湾や中国問題よりも急を要する重要な政治問題は他にも多くある。対外関係が選挙において決定的な問題となることはほとんどない。その対外関係においてさえも中国問題はイスラーム過激主義やロシアの問題を前に霞んでしまうこともあり得る。

出典:Robert Sutter,‘The Taiwan elections: don't expect a US policy change’(PacNet, January 20, 2016)
http://csis.org/files/publication/160120_PacNet_1608.pdf

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