2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2016年3月5日

 激しく変わりゆく社会を子どもや若者がたくましく生き抜いていく力を育てるということは、いつの時代にあっても大切な課題です。学校で学ぶ知識や経験だけでなく、異なる年齢や様々な背景を持つ子どもたちが共に過ごす放課後の体験や、家庭内では兄弟姉妹や祖父母と、あるいは地域における信頼できる大人との触れ合いを通じては、多くの子どもが学びと生きる力を養ってきました。

山北での夏期合宿。子供たちの疲れを滝が洗い流してくれる

はじめ塾の教育とは

 ところが現代は、昔と比べてこうした機会が極端に少なくなり、その質も大きく変わろうとしています。その結果、精神的・体力的にも弱く、不登校やひきこもり、いじめといった問題を抱えて苦しむ子どもや若者が増え、そのことで多くの親・家族も翻弄され、本当の幸せが何であるのかを見失っている姿が目立つようになっています。

 今回紹介する「はじめ塾」は、80年以上もの歴史を持つ寄宿生活塾です。小田原の住宅地の普通の民家で行われているその試みは、時代時代において様々な問題を含みもつ社会で、子どもたちが“したたかに”かつ“しなやかに”生きる力を身につける場となり、親たちにとっても、生き方を見つめ直し自分らしさを取り戻す場になっています。

 中学1年生から高校3年生までの男女約15名前後が、親元を離れて塾長家族と一緒に生活しています。子どもによって数か月から数年間と寄宿する時間も事情も違いますが、やがて各々が力をつけて、あるいは取り戻して巣立っていきます。寄宿生だけでなく、自宅から通う通塾生もいて、その中には小学生の姿も混じります。行事のみ参加する子どもたちも多く、夏期日課(夏休み中の長期合宿)や田植え・稲刈り、餅つきなどは、子どもたちの出入りが盛んでたいへんな賑わいです。また幼児はもちろん、巣立っていった大学生や若者たち、父母や支援者などの姿も加わって、多いときには百名を超えます。中には父母や祖父母がかつての塾生だったという家族、噂を聞きつけて海外から参加する家族など、かかわり方は多様です。はじめ塾はその教育理念と哲学に共感した多様な分野の人々が集う場となっているので、子どもにとってこのような多様な人達との出会いは貴重な宝物になります。

 目の前で起きていることの問題解決だけでなく、子どもがやがて社会に出るため、あるいは大人になるために必要な、主体的に判断して行動できる能力、つまり「自立心と生活力」を養うことを第一の目的とし、教育の原点をひたすらに追い求める活動。一言では言い尽くせない、広くて深く、かつ、ひたすら地道な活動の一端を知るために、このほど、はじめ塾にかかわる様々な立場の人々の話をシリーズで掲載します。


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