2024年4月25日(木)

Wedge REPORT

2016年3月6日

山北で年末に行われた餅つき大会の様子

“安心”を提供する場

伊藤さん(父):食の話が出ましたが、はじめ塾の食事は体に優しい穀物菜食が主体です。アトピーの娘を連れて外出するときには常に食事の不安が伴っていましたが、はじめ塾では食事の心配が全くなく、お弁当作りの負担から妻が解放されたことは嬉しかったですね。皆で同じものを安心して美味しくいただけるということは、本当に幸せなことです。

高橋さん:「はじめ塾とはどういうところですか?」との問いに、「寝るところと食べるところと答える」と聞かされたことがあります。まさにその通りですね。安心して寝られて、安心して食べられたら、それ以上の幸せはありません。

 その「安心」を実感できる場を80年間提供し続けて来たのが、はじめ塾の特徴だと思います。子どもたちは、重宏先生や正宏先生から安心を感じられるので、心を許すのだと思います。

 大抵の子どもが小さい頃は母親が一番です。命の存在のもとですから。ところが思春期になるに従って母親は疎まれるようになり、母親にとってはそれまでで最も苦しむ時期を迎えるのだと思います。私も子どもの急激な変化についていかれずに苦しみました。はじめ塾と関わることで、この苦しみを乗り越えられたように思います。

 親と子どもは別人格であると認識できた時が、親子ともに、はじめ塾からの巣立ちの瞬間だと感じます。

ドロップアウトしたが故に訪れた出会い

北川さん:私自身の人生を振り返ると、学生時代は受験戦争が当たり前で、偏差値や学歴が人の価値や幸せの基準を測るものだとする風潮を引きずって大人になりました。そのまま親になったとき、子どもの幸せというのも、目に見える物質的なものや、数字で評価される分かりやすいところにあるものだと何の疑いもなく思ってきました。

 我が子は、そうした価値基準から大きく外れる子どもで、愉しいと感じる瞬間を夢中に生きていて、興味のあることにはひたすら没頭するものの、競争心とは無縁なタイプでした。親ですから、我が子の個性を伸ばしてやりたいと思いながらも、私自身が満足して生きてきた世間の価値基準に合わせていくことが幸せだろう、学校の望ましい枠にはめ込んだ方が都合が良いだろうと、意識的にも無意識的にも軌道修正することに必死になっていたように思います。

 その結果、中学生になって、とても分かりやすい形で、学校という管理社会からドロップアウトしました。感度の鈍かった私も漸く子どもの心の叫びに気づかされました。そして、はじめ塾との出会いによって、偏差値や世間体に縛られてきた私自身の価値観を見直すきっかけを得ることになり、それまで知らなかった深みのある豊かな人生観や自然体の生活の心地よさというものに触れることになりました。

 他人の評価を気にしたり、勝ち負けに拘っていた頃は、今日という日に満足することができず、常に明日や未来に自分や子どもを急き立てていました。そうした生き方から解放されつつある今が一番楽で、自分の人生を楽しんでいるように感じています。はじめ塾と、そして息子にはとても感謝しています。


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