WEDGE REPORT

イーロン・マスクの夢を追う2社 ハイパーループ開発スタート

土方細秩子 (ひじかた・さちこ)  ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

WEDGE REPORT

時間軸の長い視点で深く掘り下げて、世界の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

»最新記事一覧へ

 

オープンソースで、人、カネ、技術を募集

 一方のマスク氏側だが、会社を設立するにあたりボランティアを募って自主的にこの未来型交通機関に参加、という一風変わったスタイルをとっている。こちらの会社、ハイパーループ・トランスポーテーション・テクノロジーズは、ウェブサイト上で「世界のどこにいても一緒に働ける。最低で週10時間以上の時間を費やしてくれる人を募集」しており、その報酬は同社の株式。

ハイパーループ・トランスポーテーション・テクノロジーズ社のイメージ

 つまり起業家精神を持つ人々が集まって、未来の技術を共に作り出そう、というアイデアだ。スペースXのロケット技術者などがパートタイムで参加し、夢の実現を目指す。同時にこのウェブサイトではクラウドファンディングによる基金も募集している。

 ハイパーループテクノロジーから遅れを取ること約半年、今年2月トランスポーテーションも1億ドルの基金を集め、中部カリフォルニアで全長8キロのテストトラック建設に着手した。噂ではテキサス州内での建設とされていたが、もともとの計画が「サンフランシスコーロサンゼルス間を30分で結ぶ」ものだっただけに、テストトラックから実用に移しやすいカリフォルニアが選ばれたと思われる。

同上

 トランスポーテーションのPodはテクノロジーのものよりやや大型で、28人を収容できる。CEOはマスク氏の意思を受け継いだディルク・アールボーン氏。同氏によるとテストトラックは「カプセルの運用、乗り心地、全体のオペレーションなどを見るためのもので、スピードや実用化についてはすでにクリア済み」という。そのため、このテストが終わり次第実際の路線建設を始め、早ければ2018年にも実用化が可能、と豪語する。

 建設費用だが、アールボーン氏によるとロサンゼルスーサンフランシスコ間で約160億ドル。マスク氏の当初の計画では80億ドルで建設可能だったが、様々な技術的課題をクリアするにはこれだけの費用がかかる。ただし「実際に運用しようと思えば1000億ドルは下らないのでは」という指摘もある。

 アールボーン氏は運賃についても非常にユニークな考え方を披露する。「スマホゲームが無料で提供され、ゲーム内のアイテム購入などで収入を得ているように、ハイパーループも運賃を無料にできる可能性がある」というのだ。
米の国内線航空機は手荷物や機内の飲み物、食べ物、インターネット、ビデオなどに課金しているが、同じような利用者課金が考えられるのか、あるいは広告収入に頼るのか。詳細は明らかにされていないが、もし本当に無料で提供されるならば、交通機関にとってひとつの革命となるのは確かだ。

previous page
2
nextpage
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
「WEDGE REPORT」

著者

土方細秩子(ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

WEDGE Infinity S
ウェッジからのご案内

Wedge、ひととき、書籍のご案内はこちらからどうぞ。

  • WEDGE
  • ひととき
  • ウェッジの書籍