WEDGE REPORT

全てプーチンのシナリオ通り 戦国武将さながらの謀略
シリア停戦声明 アサド政権の正統性を既成事実化

佐々木伸 (ささき・しん)  星槎大学客員教授

共同通信社客員論説委員。ベイルートやカイロ支局長を経て外信部副部長、ニュースセンター長、編集局長などを歴任。

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時間軸の長い視点で深く掘り下げて、世界の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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 アサド氏は従来から、内戦は合法政権とテロリストとの戦いであると主張、プーチン氏もこれを支持し、合法政権であるアサド政権の了解を得ていない米主導の有志連合の空爆作戦は主権の侵害だと批判してきた。これに対して、反体制派を支援してきた米国や英仏、さらにはサウジアラビアなどはアサド政権を犯罪者政権として追放するよう要求してきた。

 しかし今回、米国に過激派に対するシリア政府軍の攻撃を正式に認めさせたことは、アサド政権の正統性を事実上認めたさせたことにもなり、反体制側からすれば、「明らかに米国の裏切り。この5年間の戦いは何のためだったのか」(中東アナリスト)との思いが強い。

満足感あふれるプーチン大統領の表情

 このため27日に停戦が本当に実施されることには大きな疑問符が付く。米ロの合意へ強く反発することが必至の反体制派がすんなり受け入れるとは考えにくい上、反体制派をテロリストとするアサド政権も攻撃を停止するのかどうかは不明。そしてなによりもロシアが反体制派への空爆を完全に停止するのかも分からない。反体制派を過激派として攻撃してきたのは他ならぬロシア自身だからだ。

 そもそも過激派と反体制派をはっきり区別することが可能なのかどうか。例えば、ヌスラ戦線は反体制派と共同歩調を取って戦闘していることも多く、両者を明確に識別するのは相当難しいだろう。プーチン氏はテレビ演説で「ようやく長年の流血と暴力を終わらせる現実的な機会が来た」と表明したが、その表情には満足感が垣間見えた。思惑通りの合意を手にしたからと思ったのは私だけだろうか。

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著者

佐々木伸(ささき・しん)

星槎大学客員教授

共同通信社客員論説委員。ベイルートやカイロ支局長を経て外信部副部長、ニュースセンター長、編集局長などを歴任。

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