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2016年2月29日

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倉都康行 (くらつ・やすゆき)

RPテック代表取締役、国際金融評論家

1979年東京大学経済学部卒。東京銀行、バンカース・トラストを経て、チェース・マンハッタン銀行。2001年4月に金融シンクタンクのRPテック株式会社を設立。

 季節は徐々に春へと向かい始めているが、経済に春一番が吹く日はなかなかやって来ない。それどころか、単一エンジンとして世界を牽引していた米国経済さえも、やや調子がおかしくなってきた。中国経済、原油安、欧州金融不安、シリア混迷といった不透明要因がなかなか払拭されない中で、米国まで成長ペースが失速するとなれば、どんなに日本経済に強気な安倍政権でも、消費税増税見直しを含め経済対策を検討せざるを得なくなるのではないか。

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 米国経済が不調という見方には異論があるだろう。確かに昨年第4四半期の成長率は前期比0.7%と急減速したが、本年1-3月期は2%台へと回復する見通しであり、失業率が5%を割れるなど雇用市場も改善の一途を辿っている。自動車販売は絶好調であり、住宅市場では価格が上昇基調を維持する中で、新築・中古ともに販売件数は順調に伸びている。FRBは昨年12月に利上げをした後、2016年は3カ月おきに利上げを行う「金利の正常化」へのメッセージを打ち出していた。

FRBはいずれ利下げに向かう

 だが、年初来の市場の乱流をFRBも無視できなくなっている。恐らく3月のFOMCでの利上げは凍結されるだろう。ただしそれは、単なる利上げの先送りに止まらない可能性が高い。市場には、今年は利上げができないとの見方が急速に強まっており、気の早い向きは「FRBはいずれ利下げに向かう」といった相場観に転じつつある。

 そこには、単に市場が荒れて株価が下落しているから、という皮相的な思惑だけでなく、米国が景気後退に向かい始めている、という冷静な現状認識が含まれていることに注意しておきたい。中国経済のハードランディングや欧州金融の信用不安でリーマンショック並みの激変が起き、米国がリセッションに入る、といった超悲観的な筋書きではない。景気循環の必然性として、2009年6月に始まった米国経済の拡張期がそろそろ終盤に差し掛かっているという、極めて常識的な判断から来る米国経済不安説なのである。

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