2024年4月23日(火)

Wedge REPORT

2016年2月29日

サイバニクスタウン構想

 医療産業ではドイツと米国が世界のトップを走っており、「日本で生み出したイノベーションを日本で高く評価できなければ、世界を巻き込んだ産業にはならないので、戦略的な取り組みが必要だ」と国全体としての取り組みが必要だと強調した。

 山海社長は「これまで作ってきた開発の仕組みをほかのベンチャーに展開して加速させることが重要だ」と指摘、「研究開発の能力、国際認証を取得する能力、治験を進める能力などをひとかたまりとしてできるCEJ(サイバニクス・エクセレンス・ジャパン)という組織を数年内に作り、新しいベンチャーの成果が社会に展開できるようにしたい」と述べた。この構想は、つくば、東京地区、福島にサイバニクスタウンを作る計画だという。

 山海社長は、つくばの計画について「東京オリンピック開催までには、ロボットが歩ける街に着工したい」と語り、建設用地をすでに確保、スーパーコンピューターを配置して進める計画がスタートしている。福島については「被災地支援という形で、ロボットがロボットを作る工場を建設したい。高齢化により技術の伝承が難しくなる中、人の技術をロボットが伝承する場を作りたい」と話した。

平和利用に限定

 山海社長は「サイバニクスの技術は軍事利用に転用される可能性が高く、これまでもいくつも誘いはあったがすべて断ってきた。14年3月には東京証券取引所マザーズに上場したが、株式上場の際の目論見書にも平和利用に限定すると明記している」と述べた。またM&A(企業合併・買収)によりベンチャーの会社が買い取られるリスクについては「上場した後に買収されてしまっては大変なことになるので、そうならないように複数議決権という方式で安易にM&Aができにくいようにしている」と話し、買収に対しては防衛策を講じていることを明らかにした。

 昨年までは医療用機器として認められていなかったためロボットの利用台数は年間150~200台と少なかったが、昨年12月25日以降は医療用として認められたのでこの半年では福祉用として介護現場などに500台ほど出ている。「今年はさらに700~1000台出るのが目標で、その後が指数関数的に伸びていくのではないか」と大幅な伸びを見込んでいる。

略歴
山海嘉之(さんかい・よしゆき)氏:1958年生まれ。87年筑波大学大学院工学研究科博士課程修了、91年にロボットスーツHALの基礎研究を開始、2004年に筑波大学大学院システム情報工学研究科の教授(現職)に就任、同年に大学ベンチャーとしてサイバーダインを設立。岡山県出身。

  
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