2024年4月25日(木)

特別企画 海外はオバマ訪日をどう見ているか

2009年11月19日

 オバマ外交については、すでに共和党の保守系の人々から“弁明外交”とか“弱腰外交”と言われています。プラハ演説で核使用を反省する発言をしたり、今おこなっているロシアとの核削減交渉も、そういう批判の的になっている。

 オバマ大統領就任後にダライ・ラマ14世が訪米しましたが、オバマ大統領は彼に会わなかった。そういう大統領は18年ぶりです。つまり、ダライ・ラマ14世と訪中よりも前に会談すれば、米中関係に波風を立たせることになる。それを避けたとみられます。今回の訪日でも、オバマ大統領は天皇陛下に対して深々とお辞儀をしている。アメリカ国内の保守層からは、こういうことも「国家元首としてやるべきことではない」という批判を受けるかもしれません。

 だから一見弱腰に見えますが、実はオバマ大統領は、共和党の右端や民主党の左端を排して両党の超党派連立チームを組んで、非常にプラグマティックな外交をしようとしている。簡単に言えば、お互いが好きだから協力するのではなく、お互いの利益になるから協力するということです。自国の利益になることを最優先に考えている。

――その場合の利益というのは、経済のことでしょうか。

 今回、オバマ大統領は東京でのアジア外交演説で4つの利益を例示しました。ひとつは経済、そしてアフガニスタン問題、核不拡散、北朝鮮問題。今後は通商問題も出てくるでしょう。来年の議会議員中間選挙まではとにかく景気回復をしたいところでしょうが、2012年の大統領選挙では、対中政策が大きな争点になる可能性もあります。

――現在の中国は、日本のGDPをもうすぐ抜き、大きな軍事力を身につけようとしている。アメリカと伍しうる中国になりつつあります。オバマ政権が自由や民主主義に反している中国の価値観を批判しなければ、米中による冷戦時代が始まることを助長するのではないか、という意見もありますが、そのあたりはいかがでしょうか。

 アメリカからの中国の見方にはいくつかあって、中国だけをみると「けしからん」ということが多い。一方で、国際交渉の場で中国をみると、「協力したほうが得かもしれない」ということも多い。

 オバマ政権のアプローチは、アメリカの利益が判断基準でしょうから、使い勝手があるという面を重視しているのでしょう。国際的にはアメリカや日本、オーストラリアやインドなど、デモクラシーのコアリション(連携)で中国を封じ込められるという見方もありますが、その可能性は薄いでしょう。オバマ大統領は対中封じ込めは行わないと明言しましたが、政権が替われば異なるアプローチもありうると思います。

日中間にもプラグマティックな協力が必要

――アメリカの足元では、中国に対してはいろいろな意見があるけれども、現実にはアメリカの経済状況も悪いし、中国と協力して得られる利益はプラグマティックに追求していこうということですね。2012の選挙まで、アメリカの対中スタンスが変わらない、とすると、軍事的にも経済的にも台頭してくる中国の脅威に、東アジアに身を置く日本はさらされます。日本は安全保障上の防衛策を、それこそプラグマティックに持つ必要がありますよね。

 かつて自民党政権はそういうことを言ってきましたが、鳩山首相は最近「米中と日本の関係は敵対的になるものではない。むしろwin-winの関係にある」と発言しました。中国についての認識が、やや楽観的ではないでしょうか。そしてそれが、鳩山首相のアメリカに対する批判的発言とセットになっているんだと思います。


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