2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年3月15日

 ダニエル・イノウエ・アジア太平洋安全保障センターのジャクソン准教授が、2月8日付Diplomat誌ウェブサイト掲載の論説にて、今の北朝鮮に基づいた新たな対北朝鮮政策が必要であり、非核化を交渉目的とする政策を変え平和条約の議論を始めるべきだ、と述べています。論旨は以下の通り。

平壌の祖国解放戦争勝利記念館前にたたずむ北朝鮮軍のガイド(iStock)

 次期米大統領は、これまでとは違う北朝鮮に直面することになろう。従来の政策は不十分である。以下の考えが今後の対北朝鮮政策の新たな基本ラインになるべきである。

 北朝鮮の小規模の挑発は望ましくはないが許容できる、との従来の考えは、二つの理由で通らなくなった。第一に、この考えは、北朝鮮への報復を主張する2010年来の韓国の立場と全面的に矛盾するようになってきた。報復すれば半島の安定は崩壊するし、しなければ北朝鮮の一層の挑発を招く。第二に、挑発が続くことは韓国での米国のコミットメントの信頼性を侵食することになる。

「正当な朝鮮国家」と認めてほしい北朝鮮

 北朝鮮を予測不可能で狂った国と見るのは正しくない。北朝鮮の行動は合理的である。北朝鮮は、何時、いかなる場合に挑発すべきかについては熟慮し、エスカレーションをコントロールするために既成事実や単独の事件を通じて挑発する。危機になっても面目ある出口を探る。将来もソウル攻撃や核の先制使用はしないだろう。それらはレジームの壊滅が切迫した際の最後の手段であろう。

 今や北朝鮮は核保有敵国である。北朝鮮の崩壊を望んだり、北の挑戦にはそれを上回る反撃をすると宣言したり、核の使用をちらつかせることは、今やナイーブで危険な考えだ。核保有は、非戦争事態でも北朝鮮の行動の自由を広げる。最近のB52の挑戦半島飛行のような、域外からの米軍の大規模な部隊移動にも核戦争の危険が伴うようになった。

 北朝鮮が核兵器を保有した以上、意味ある非核化交渉は夢物語になった。今後北朝鮮の安全保障政策における核の重要性は増えこそすれ、減ることはない。北朝鮮と本気でエンゲージしていくのであれば、その直接の目的は非核化ということにはならない。

 北朝鮮は、我々とは異なる和平を望んでいる。北が欲する和平は、核兵器保有を正式に認め、韓国を平和条約から除外することによって韓国より上位の「正当な朝鮮国家」と認め、米軍を半島から撤退させることで、裏口から北の核保有国としてのステータスを正当化し、米韓の間に楔を打つようなものである。そのような和平は米朝間の和平でしかなく、南北間の敵対関係は続く。これらのことは、いずれかの時点で平和条約の議論を始めるべきではないということを意味しないが、議論に当たっては、それが米の同盟関係と不拡散の規範にどういう意味を持つかについて冷徹な考えを持つことが非常に重要となる。


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