BBC News

2016年3月8日

「@」マークはインターネット時代を象徴する。メールやソーシャルメディアでの交流になくてはならないものだ。しかし実はどこからやってきたのか、定かなことは誰にも分かっていないのだとクレア・ベイツは書く。

「@」はかつて、簿記係しか使う人のいない、ほとんど誰にも知られていない記号だった。それが一変したのは、電子メールの発明者と目されているレイ・トムリンソンさんのおかげだった。

トムリンソンさんは1971年に、オフィスにあるコンピューター2台の間でメッセージを送受信する際に、利用者の名前と行先を区分けするために、キーボードに並ぶ記号から「@」を選んだ。なぜ「@」かというと、コンピューターではほとんど使わない記号だから。初期のプログラムや基本ソフト(OS)を混乱させる心配がなかったからだ。幸いなことに、「@」の英語名はその当時から「アット・マーク」だった。

「『@』マークは19世紀末にタイプライターに登場した」と、英語記号についての著作「Shady Characters: Secret Life of Punctuation」のあるキース・ヒューストンさんは言う。「『この商品はこの値段でこの数ある』と読む人に示す一般的な記号だったようだが、それ以外の用途はなかった」。

タイプライターについていたので、コンピューターにきちんとしたキーボードが付くようになると、「@」マークもそのまま採用された。

「キーボードに『@』マークが残ったのは、コンピューターがビジネス機器で、『@』もビジネスで使う記号だったから」とヒューストンさん。

たとえば、バッテリーの値段を「各100円」と表記する際、「バッテリー12個@各100円」と使ったのだ。

2000年にはイタリアの研究者ジョルジオ・スタービレ氏が、国によって「@」マークの見た目を描写する表現が違うと指摘。トルコ語では「バラ」と呼び、ノルウェーでは「ブタのしっぽ」。ハンガリーでは「みみず」と呼ぶ。その一方でフランス語、スペイン語、ポルトガル語では「@」は、重量の単位アロバーセや体積の単位アローバを意味する。イタリア語では「@」は、古代から保存用に使われる長首の壺「アンフォーラ」と呼ばれる。

スタービレ氏は、1536年にスペイン・セビリヤからイタリア・ローマへ送られた手紙に「@」が使われているのを発見した。新大陸からスペインに向かってくる船3隻の到着に関する手紙では、「アンフォーラ入りのワイン」の売買について言及があり、そこで「@」を「アンフォーラ」の意味に代用していた。スタービレ氏は、中世の南欧では「@」マークを、さまざまな計測単位の記号として使っていたと結論した。

スペインの記者ホルヘ・ロマンセさんはその後、さらに早い時期の「@」使用を発見した。「16世紀に『@』が使われていたと読み、自分がサラゴサ大学で歴史学の学生だったときにこの記号を目にしたと思い出した。学生の頃に集めた資料を探ったところ、15世紀のアラゴンとカスティリヤの間の税関記録で『@』が使われているのを見つけた。重さの単位『アローバ』の意味で、たとえば『小麦1アローバ』というように使われていた」とロマンセさんは言う。

しかし現在確認されている最も早い時期の「@」使用例は、宗教的な内容のものだ。ギリシャ神話をブルガリア語に翻訳した1345年の写本は現在、バチカン図書館に所蔵されており、「アーメン」という言葉の「ア」音の文字として「@」が使われている。なぜそのように「@」が使われたのかは謎だ。

最初の用例の理由が謎ならば、「@」を使った最初のメールが時と共に失われてしまったのも、順当と言える。トムリンソンさんが一番最初に「tomlinson@bbn.tenexa」にメールを送った時、それがいかに世界を決定的に変えるか気が付いていなかったので、内容をわざわざ書き留めてはおかなかったのだそうだ。

(英語記事 The mystery over the @ sign)

提供元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-35751424

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