2024年4月19日(金)

坂本幸雄の漂流ものづくり大国の治し方

2016年8月5日

 これより短期間で製品化することは、不可能ではないが、少なくともこれぐらいは時間をかけないと、市場が驚くような製品を出すことはできないだろう。価値のない製品を出しても意味はない。

 先日、CEOになって1年も経過していない某企業のトップが直近四半期の業績が向上したことについて、自分の手柄のように発言していたが、そんなはずがない。

 私がCEOを務めていたエルピーダメモリの主力製品は、携帯電話の記憶装置等に用いられるDRAMであったが、開発開始は2003年で、マーケットが飛躍的に拡大したのが12年なので、9年かかった。今なおエルピーダを買収した米マイクロンの圧倒的な稼ぎ頭になっている。

 スピード経営といっても5年はかかる。CEOはその期間、我慢をしつつ、一方で経営効率を高めていく作業が必要となる。

 また、CEOと副社長では、得られる人脈が雲泥の差だ。当然、業務提携などの戦略上重要な案件も「優良人脈」があれば、進めやすくなる。小泉政権以降、日本の首相がコロコロ替わり、外交上マイナスだと言われていたが、ビジネスの世界でもそれは当てはまる。

 もちろんできの悪い経営者はすぐに替えるべきだが、むやみに後進に道を譲るというのは考えものである。

iStock

 

  
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◆Wedge2016年3月号より


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