2024年4月19日(金)

田部康喜のTV読本

2016年3月12日

 このドラマの謎解きは、「多岐川事件」と廃棄物処理場の白骨死体を結ぶ線のうえになにがあるか、である。

大きな流れと1話ごとの小さな事件が織りなす

 そして、警務課員という閑職に飛ばされている、尾関(舘)もまたこの事件の解明になんらかの形でかかわっていくのだろう。板垣と交錯しながら。

 ドラマは、そうした大きな流れを太い縦糸として、1話ごとに小さな事件を横糸として織りなされている。

 第2話では、傷害事件を起こして刑務所に入り、保護観察処分で出所した山中(ダンカン)の物語である。尾関(舘)は山中に、遺品整理会社の仕事を世話する。しかし、山中は仕事が手につかず、妻で元キャバクラに勤めていた真奈美(芳本美代子)を夜の街で捜し歩いている。

 山中は、遺品整理の作業中に、遺品のなかから旧陸軍の歩兵銃を手に入れる。そのことを知った尾関は、拳銃所持の許可を得て、山中を追う。

 真奈美の愛人が経営するスナックで、歩兵銃を真奈美に突きつける山中を説得しながら、腰の拳銃の引き金をいつでも引けるように、右手を後ろ手にまわしている。

 「真奈美と話したいだけなんだよ」と山中。

 尾関の説得によって、山中は銃を投げ捨てる。銃には弾は込められていなかった。

 「たけし軍団」のダンカンと、舘の息の詰まるやりとりは魅せる。

 NHKは昨春「土曜ドラマ」で、横山秀夫原作の「64」を放映。平成27年度の文化庁芸術祭でテレビ・ドラマ部門の大賞を獲得した。

 県警の広報官が、昭和64年に起きた少女誘拐事件の謎を解く異色の事件モノだった。

 過去の事件とまったく同じような脅迫と金銭を要求する事件が発生し、ふたつの事件が最後に重なり合う。

今回の「クロスロード」は、「64」に匹敵する傑作である。

  
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