BBC News

2016年3月10日

英王室は9日、英大衆紙サンが「英国の欧州連合(EU)離脱をエリザベス女王が支持している」と報道したことに抗議し、新聞業界の自主規制審査機関「独立新聞基準組織」(IPSO)に不服を申し立てた。

サン紙は9日付一面で、「女王はブレグジットを支持」という見出しを掲載。EU支持派のニック・クレッグ前副首相と女王が2011年に昼食をとりながら「大ゲンカ」するのを目撃したという、匿名の消息筋の話を報道した。「ブレグジット=Brexit」とは「British exit」の略語で、英国のEU離脱を意味する。

こうした報道内容に対して王室は女王が「政治的に中立だ」と反論。クレッグ氏も「まったくのでたらめだ」と一蹴したが、サン紙は報道内容に自信があると強く主張している。

サン紙は記事で、クレッグ氏と「口論」する様子から「欧州に対して女王がどういう思いを強く抱いているか、もはや疑いようがない」と書き、女王はクレッグ氏を「長々と叱責し、他の客を茫然とさせた」と続けた。また「数年前」の別の機会にもバッキンガム宮殿で複数の議員に対し、「私はヨーロッパが分からない」と「憎々しげに思いを込めて」告げたと書いている。

王室に抗議されたサン紙は「サンは記事内容に自信を持っている。優れた2つの情報源から得た情報をもとに、力強くわかりやすい形で提供した」、「不服に対して我々は積極的に、自社の主張を弁護していく」とコメントした。

バッキンガム宮殿の報道官は9日、「本日のサン紙の一面記事について、IPSO議長に不服申し立ての書簡を送ったのは確かだ。編集者の行動規範条項第1条に関する内容だ」と発表した。

IPSOの編集者行動規範の第1条は、「報道機関は不正確で誤解のもととなる内容、もしくは記事本文の裏付けのない見出しを含む、歪曲された情報や映像を出版しないよう留意しなくてはならない」と定めている。第1条はさらに、「社説を展開し、運動する自由はあるものの、報道機関は論説と推測と事実を、明確に区分けしなくてはならない」と書いている。

サン紙のトム・ニュートン・ダン政治編集長は、「(情報を得るには)絶好の立場にいる2つの別個の情報源から」女王の発言について情報を得ていなければ、今回の記事は掲載していないと書いた。

ダン氏はさらに、確かに女王は政治問題の「ごたごたに関わってはならない」が、「ブレグジットについて意見を持っているなら、有権者は知る権利があるのではないか?」と主張した。

憲政に詳しいキングス・コレッジ・ロンドンのバーノン・ボグダノア教授はPA通信に対し、何十年も君主の立場にあるエリザベス女王が今さら政治的中立の慣習を破るなど「ばかげた話」だと述べた。

「非常に疑わしい。女王は閣僚の諮問を受けて発言し行動するものだ。スコットランド自治独立をめぐる住民投票の際には、皆が投票する前にじっくり考えた方がいいと言ったまでで、それはとても賢い発言ではないか」

<分析> ピーター・ハント王室担当編集委員

女王が特定の新聞に対して行動を起こすのは異例だ。

いかに女王が今回のことを深く不快に思っているかの表れだ。

政治のごたごたには関わらず超然とした存在であることを誇る王室にとって、「女王はブレグジット支持」というサン紙の見出しは、悪質かつ極めて不愉快なものだった。

ただし、王室による今回の不服申し立ての動きは、リスクも伴う。過去の政府高官が貫いた「決して文句を言わず、決して言い訳しない」の合言葉とは大きく異なる。

IPSOに王室が書簡を書いたことで、サン紙記事をめぐる議論は続く。

そしてスコットランド住民投票の4日前に女王が意識的にとった行動についても、関心は消えていない。

2014年の住民投票を目前に、沿道で女王を歓迎した住民に「未来について皆さんがじっくり慎重に考えて下さることを期待します」と女王が語りかけたとき、それはスコットランドの英国残留支持する発言と受け止められた。

意図的なこの発言を、女王と上級顧問たちはいずれ後悔するようになるかもしれないのだ。

(英語記事 EU referendum: Palace complains over Queen 'Brexit' story)

提供元:http://www.bbc.com/japanese/35770681

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