2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2016年3月12日

都知事や都議会の見識が問われる段階

 たった1つの入試の出題ミスではあるが、その公正性は、受験生にとっては非常に重要な問題だ。さらに、都教委が、試験直後から再三ミスを指摘されていながら、応じずに合格発表までしてしまった背景には、地学教育の空洞化や公益を軽視する隠蔽体質などの大きな社会問題が潜んでいることも考えられる。

 都教委の内部にも、このままでは良くないと思っている人もいるだろう。しかし、上司から、「中学校ではこのように教えているから問題ない」として苦情を処理するように指示されているだけかもしれない。

 医療界では、医療事故を起こした当事者がそのことを患者に正直に話そうとしたら、上司に隠蔽するように指示されて、その後、嘘をつかなければいけない自分との葛藤の末、当事者自身が精神的ケアを必要とする状況に至ってしまった事例も報告されている。

 企業でも、「化血研の薬剤不正製造」「東芝の不正会計」など、組織内の不正が、公益通報によって発覚する事件が相次いでいるが、教育委員会が、何らかの私益が公益に勝るような組織になってはいけないはずだ。

 もし、ホームページで公表されている都教委の「見解」がこのまま放置され、世界中に知れ渡ったら、日本の科学水準やアカデミアへの信頼も揺らいでいくのではないか。

 著者の知人も含め、この設問の誤りに気付いた教育関係者や科学者たちは皆、良心の呵責に苦しんでいる。

 都教委が頑なになっている以上、都知事や都議会、そして文部科学省の見識と責任が問われる段階だ。そして、都は、都教委に適切な対応を指示するだけでなく、再発防止に向けて、なぜ都教委自身が、簡単にふさぐことができたはずのミスの傷口を、ここまで広げてしまったのかを検証すべきではないか。
 

  
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