イノベーションの風を読む

2016年3月15日

»著者プロフィール
閉じる

川手恭輔 (かわて・きょうすけ)

コンセプトデザイン・サイエンティスト

1990年代から、大手メーカーでインターネットサービスの企画・開発・運用を手がけ、自ら立案したグローバルなサービスを複数立ち上げた経験を持つ。その1つは、サービスのデザインでグッドデザイン賞を受賞した。コンピューターサイエンス関連の翻訳本も多数ある。

 インターネットが出現するまで、一般消費者向けの製品をつくる製造業は、造った製品を流通業に販売するだけで、その製品の顧客との接点はほとんど持っていなかった。接点といえばTVなどのマスメディアを利用した広告などの一方的なものばかりで、双方向性のあるものは困ったときだけ顧客から電話をかけてくるコールセンターぐらいだった。しかし、インターネットによって製造業が顧客との接点を持つことが容易になった。さらにIoTによって顧客が製品を使う経験に積極的に関与して、提供する価値を最大化することができるようになる。

 ① 製品に関連するサービスをクラウドから提供する

 ② 顧客ごとに最適なサービスを提供するために必要な情報を収集する

 これが「新しい市場への進出や新製品の開発」のためのIoTの基本的なモデルになるだろう(図5)。これを実現するにはハードウェアだけではなく、クラウドやスマートフォンのアプリなどのソフトウェアが重要な役割を果たすことは言うまでもない。

(図5)

 技術のコモディティ化や経済のグローバル化が急速に進み、 単一の製品や技術のみで差別化を図ることが難しいという状況が、とくに日本の製造業において困難な事態を引き起こしている。さらに人々は、製品そのものの機能や品質や価格ではなく、購入した製品を利用することによって、どのような体験(経験価値)が得られるかを重視するようになってきた。「新しい市場への進出や新製品の開発」のためのIoTは、これまで「モノづくり」中心だった日本の製造業が、経験価値を提供する「コトづくり」へ自らを変革することを可能にするモデルだと考えることができる。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る