海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年3月16日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

ラインス・プリーバス共和党全国委員会委員長の一言

  さて、雪が降り続く中、フォックス劇場と道路を隔てた場所にメディア関係者がテントを張り、中継を行っていました。米CNNのテントでは、ラインス・プリーバス共和党全国委員会委員長が黒色のコートに降りかかった雪を払い落した後、耳にイヤホンを入れてインタビューの準備をしていました。

 テントの中にいる共和党全国委員会のスタッフや傍で観察している筆者には、米CNNのキャスターの質問は聞こえないのですが、プリーバス委員長の回答から質問を察することは容易でした。

 「共和党全国委員会は、誰が指名を獲得しても、指名された候補を支持します」

 「共和党には熱意とエネルギーがありますが、民主党にはそれが存在していません」

  米CNNのキャスターは、トランプ候補が指名を獲得した場合、共和党全国委員会は同候補を支持するのか、党が分裂した状態で、本選において民主党に勝てるのか、について質問をしていたのでしょう。プリーバス委員長は、笑顔を浮かべながら時々ジェスチャーを交えて、答えていました。

  インタビューが終了すると、委員長はイヤホンを外して、雪の中をスタッフと一緒に駐車場に向かって歩いていったのです。幸いなことに委員長の周りには、メディア関係者がおらず、自由にアプローチができる状態でした。そこで、筆者は委員長を追って行き、背後から質問を投げかけたのです。

インタビューに答えるプリーバス共和党全国委員会委員長(筆者撮影@ミシガン州デトロイト)

 「委員長、トランプは共和党を統一することができると思いますか」

 トランプという言葉が聞こえなかったのか、プリーバス委員長は振り返るとこう聞き返したのです。

 「誰が統一できるかと言ったのですか」

 「トランプです」

 筆者の質問に一言で回答したのです。

 「もちろんです」

 そう言って、即座にプリーバス委員長は車に乗り込んで行きました。プリーバス委員長の言葉のトーン及び表情には、米CNNのインタビューで直前まで見せていたあの余裕や笑顔はまったくありませんでした。トランプ候補の指名獲得が現実味を帯びてきていることに対して、かなりフラストレーションが溜まっているという印象を筆者は強く持ったのです。

 それから8日後、シカゴで開催される予定であったトランプ候補の集会に集まった支持者と抗議活動家が衝突し混乱が起き、結局、集会は中止に追い込まれました。今回の衝突によって、共和党幹部は同候補が「統一者」ではなく、「分断者」であるという確信を得たのではないかと筆者はみています。


  
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