2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2009年11月26日

自らの経営スタイルを貫く伊藤社長

 脱サラ・起業した当初は、下請け仕事もした。しかし、自主開発型の仕事を志向して試行錯誤を続け、声の大小を均一にする音声圧縮機を開発。これが当たり、経営は軌道に乗ったが「一つの仕事をしつつ、次はどんなことができるのか考えています」。そうしないと、「新しいものを作ってほしい」というニーズに応えられない。常にこの繰り返しで、苦労の連続だった。今では地域の顔役ともいえる経営者になったが、図面を渡されて作る製作型ではなく「開発型の仕事を選びます」と、当初からの経営スタイルを貫く。

 「経営の根幹となる財務、中小企業が遅れがちになるIT、セキュリティなど、勉強を怠らないようにしています」。営業部隊を持たないため、専門誌等に広告を出すなどしていたが、「これは使える」と、ホームページを90年代後半からいち早く立ち上げた。

 「ここ十数年、大企業がやっとパートナーと認めてくれるようになった」と、信用構築に時間がかかるように、「時間の積み重ねで培った技術と知識を、思いつきに組み合わせてアイデアにする」。これができないと、開発に至らず、思いつきのまま終わる。

 会話のなかで何度も「諦めない」という言葉を使う伊藤社長の姿勢は、助成金申請、産学連携、異業種連携……、でも発揮されている。参加しているからこそ、課題があることは知っている。ただ、「ダメだから参加しないのではなく、参加することで一つでも何か学びとります。転んでもただでは起きません」と笑う。こうした姿勢が、技術と知識、さらに信用を生む蓄積となったに違いない。

 元銀行マンで企業再生を担当した経験を持つ日本橋経営研究所代表の形岡暁生氏は「中小企業の支援組織は多いが、企業のことを理解している人は少ない」という。相談相手もなく悩む経営者が多いのも現実だ。経営相談から事業計画まで、生き残ろうとする企業を国や地域が支援できるか、「ものづくり立国」の真価が問われている。

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第1回 : 豊富な支援策が企業に届かない
第2回 : キラリと光るこの街の産業支援

 

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