世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年3月31日

 同時に米国はシリアのクルドに、混乱を利用して領土を獲るなと要請している。そんなことをすれば、エルドアンは挑発されて武力攻撃をすることになる。エルドアンが攻撃すれば、ロシアはクルドの側に立って、トルコに報復するだろう。プーチンはトルコによるロシア戦闘機撃墜への報復の口実を探している。

 エルドアンは、昨年の戦闘再開まで、トルコのクルドとの和平協議を進めていた。これを再開すべきである。YPGへの攻撃をやめ、米国と共にシリア内にクルド自治区を作るように努力すべきである。エルドアンはイラクのクルド人とは共存する道を見つけた。シリアのクルドと戦い、米国との緊張を煽ることは意味をなさない。

出 典:New York Times‘How Turkey Misreads the Kurds’(February 24, 2016)
http://www.nytimes.com/2016/02/24/opinion/how-turkey-misreads-the-kurds.html?partner=rssnyt&emc=rss

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 この社説は、トルコと同国およびシリア内でのクルドとの対決が、シリア情勢に複雑な否定的影響を与えていることを指摘しています。

トルコとYPGの対立がロシアに口実を与える

 プーチンはトルコを困らせるために、シリアのクルド勢力が西に進撃し、シリア・トルコ国境で連結された支配領域を得ることを、支援する用意を示しています。トルコはそれを許すまいとしていますから、そんなことになれば、ロシアとトルコの直接対決になってしまいます。トルコはNATO加盟国ですから、NATOとロシアの直接対決を意味します。これは危険極まりないことです。冷戦の再来ではなく、NATO・ロシア間の地域限定の熱戦になりかねません。

 米国としては、トルコにYPG攻撃をやめさせるように強い圧力を加えるべきなのかもしれません。同時に、YPGにトルコのクルド地域を分離・独立させる意図はないとの声明を、しかるべき方法で行わせるべきでしょう。そういうことで、トルコ・YPGの対立を鎮めておく必要があります。そうしないと、ロシアに情勢をかく乱する余地を与えることになってしまいます。

 トルコに対する一番の危険は、ロシアです。ロシアがトルコを威嚇しながらも直接行動に出ないのは、トルコがNATO加盟国であるからと、エルドアンは一時理解していたと思えましたが、そうでもないようです。

 米国とトルコは同盟国であり、率直に情勢評価、意見交換し、どうしていくべきかを協議することが大切です。イラク北部におけると同様、シリア北部にクルド自治区を作り、トルコがその自治区と良好な関係を築くことも一つのやり方です。シリア領内での飛行禁止地帯、避難民のための安全地帯設置と組み合わせて、そういう方向に進むのも一つの考え方です。そうすれば、難民の流出を少しは抑えられるかもしれません。

  
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