WEDGE REPORT

2016年3月25日

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ジョン太郎 (じょん・たろう)

現役金融マン

大手銀行入社後、日系・外資系の様々な金融機関で、商品開発や戦略企画などの要職に就く。投資信託や不動産ファンド、ヘッジファンド、機関投資家の自己資金運用など様々な分野で投資・運用ビジネスに携わり、株式・債券・為替・REIT・不動産・コモディティ・デリバティブ等、多種多様な金融商品に精通。2005年より、ブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」を開設。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわる様々なトピックをわかりやすく親しみやすい言葉で解説し、人気を博している。近著に「外資系金融マンがわが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話」。そのほか、マネックス証券の「マネックスラウンジ」にてコラム「お金の相談室」連載中。著書に「ど素人が読める決算書の本 第2版」「ど素人がはじめる投資信託の本」(いずれも翔泳社)がある。http://jovivi.seesaa.net/

 

デフレの15年間によく耳にした話

 企業にとってはどうだろうか。世の中全体の物価が上昇していれば、値上げして売上単価を上げ、同じ数量を売っても売上高を増やすことができる。物価上昇に合わせて従業員の給料を上げても利益額は増える。しかし、物価が下がっている環境下では、値下げをせざるを得なくなり、売上単価が下がり、同じ数量を売っても売上高が減少してしまう。すると従業員の給料も下げなくてはならなくなる。給料を引き下げることが難しい正社員よりも、より柔軟性のある派遣社員など非正規雇用を増やしたくなる。

 デフレの15年間によく耳にした話だ。こうして現役世代の労働意欲が削がれる。名目賃金は増えず、場合によっては減り、非正規雇用が増え、消費・投資意欲は削がれ、何のために頑張るのか、頑張って何を得られるのかが分からなくなり、明るい未来を思い描きにくくなる。

 一方で、企業が持っている現預金の価値はデフレによって実質的に増えていく。すると、企業にとっては現預金を投資に回す意欲が減退する。借金の負担は重くなるため、借金をして投資をする意欲はさらに減退する。起業するインセンティブも減る。こうして企業活動は活発さを失っていく。

 さらに、政府部門について考えると、デフレの進行で政府が抱える借金が実質的に増えていき、財政政策による景気刺激を行うことが難しくなる。たとえ無理をして財政出動をしても、民間企業の投資意欲が減退していては波及効果は限定的になる。政府の借金が実質的に増えれば現役世代の将来負担は重くなる。物価が下がることで税収も目減りし、政府財政はさらに悪化する。社会保障は削減を余儀なくされる。これも既に受益者となっているリタイア層よりも現役世代により大きなダメージを与えることになる。

 こうしてデフレは経済・社会に深刻なネガティブインパクトを与え、デフレによる経済活動の不活性化がさらなるデフレを招くというスパイラルに陥り、抜け出すことが難しくなる。そして、その期間が長期化するほど、人々の頭にデフレマインドが刷り込まれていき、さらにデフレスパイラルからの脱却が困難になっていく。

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