世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月6日

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 今や、トランプ大統領候補、さらにトランプ大統領という悪夢が現実になりかねない状況にありますが、共和党重鎮の中から、ようやくミット・ロムニーが声を上げました。ミット・ロムニーはトランプを「ペテン師」、「偽物」と呼んで攻撃し、マケイン上院議員(2008年の大統領候補)がすぐロムニー支持を表明しました。別の動きとして、ロバート・ゼーリック元世銀総裁など共和党の安全保障専門家95名が「ドナルド・トランプ大統領」に反対する公開書簡を公開しています。

 「人が何々である」ことと、「何々をすること」には天地の差があり、「ある人が何々であること」に着目してその人を処罰するのは悪以外の何物でもありません。こういう思想を許容するのはナチスやポルポトです。

 たとえば、ユダヤ人であるから処罰したり、身体障がい者であるから処罰したり、ムスリムであるから処罰したり、入国を拒否するなどというのは、そういう意味で悪です。トランプはそういうことを平然と発言しています。

 テロリストを抑止するためにその家族を殺害の対象にするとも述べました。元国家情報官のマイケル・ヘイデン将軍は、軍は違法な命令は拒否するように訓練されている、そういう違法な命令は聞かない、と言いました。トランプは国際法に反する命令は出さないと釈明していますが、テロリストの家族の殺害は、国際法上戦争犯罪です。それ以上に、無実な人を殺害することを提言するなど、全くどうかしています。人種差別主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)からの支持表明の受け入れについての理解しがたい対応などもありました。

トランプ大統領誕生は日本にも悪影響

 トランプは、潜在的敵対者である中国と同盟国日本をしばしば同列に扱うほか、今の安保条約の仕組み(相互防衛義務の欠如)を攻撃しています。このような人が米国大統領になれば、大変なことです。

 ロムニーなどは、トランプが指名のための共和党大会までに必要な代議員を獲得できないようにし、大会そのもので他の候補にすることを狙っているのでしょう。できるか否か分かりません。本選挙でトランプは民主党候補に負けると思われますが、選挙は水物ですからとんでもない結果になることもあります。

 米国が頼りにならないこともありうることを念頭に置くのが責任ある態度です。自国の防衛は核の問題も含め自分でしっかり考えておく必要があります。EUは難民、ユーロ、英国の脱退などで崩壊寸前、米国はトランプ旋風で予想外の混乱にあります。民主主義陣営でしっかりしているのは日本ぐらいです。世界秩序は乱れてきています。日本は来るG7サミットで世界秩序を再建する道を参加国と協議していくイニシアチブをとるべき位置にいます。

  
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