BBC News

2016年3月30日

エジプト航空の国内便が29日午前、乗客にハイジャックされてキプロスのラルナカ空港に緊急着陸した事件で、逮捕された容疑者が身に着けていると脅した自爆ベルトは偽物だったと捜査当局は見方を示した。

キプロス当局によると、アレクサンドリア発カイロ行のエジプト航空機MS181便をハイジャックした疑いで逮捕されたのは、エジプト人男性のサイフ・エルディン・ムスタファ容疑者。「精神的に不安定」な状態にあるという。動機はあいまいなままだが、キプロス大統領はテロとは無関係と話している。

キプロスのカスリデス外相によると、ムスタファ容疑者は当初、キプロス人の元妻と話したいと要求。警察が元妻を空港に連れて行くと、容疑者は今度は「つじつまの合わない」要求をし始めたという。

AP通信によると、カイロの警察はムスタファ容疑者の親族に事情聴取を始めた。

警備をめぐる疑問

エジプト観光省は、MS181便がアレクサンドリアを出発する際には、あらゆる空港警備の手続きは「完全に実施された」と強調している。

エジプト内務省は、容疑者がアレクサンドリアのボルグ・エル・アラブ空港のセキュリティーを通過した際の映像を公開。これによると、容疑者は2カ所で身体検査をされ、X線検査装置に薄いバッグを通している。

BBCのユセフ・タハ記者は、昨年10月にシナイ半島上空でロシア旅客機が爆発して以来、エジプトは空港警備を強化するため対策を実施してきたと説明する。年間予算が10億ドル追加されたほか、カイロ、シャルムエルシェイク、マルサアラムの各空港での手続きを見直すため、英コンサルタント会社「コントロール・リスクス」と契約も交わした。

それにもかかわらず、現場での検査にはばらつきがあり、身体検査を拒否するVIPや国会議員も多く、空港スタッフが検査を受けずに行き来することはしょっちゅうだと、タハ記者は指摘する。

「必ず女性がからんでいる」

ハイジャック機をキプロスのラルナカ空港に緊急着陸させてから約6時間後、容疑者は飛行機のタラップを降りて投降した。

ほとんどの乗客は着陸からしばらくして解放されたが、残っていた乗客や乗員も容疑者投降の少し前に機内から脱出した。

同様に事件進行中に会見したキプロスのアナスタシアディス大統領は、テロ事件ではないと報道陣に話した。「全員の解放と安全のために最善を尽くしている」と述べた大統領は、恋愛が事件の動機かと報道陣に尋ねられると、「必ず女性がからんでいる」と笑った。

エジプト民間航空省によると、MS181便がアレキサンドリアを出発した時点で乗っていた外国人乗客は26人。米国人8人、英国人4人、オランダ人4人、ベルギー人2人、ギリシャ人2人、フランス人1人、イタリア人1人、シリア人1人。ほかの3人の国籍は不明。

エジプト航空は当初乗客81人と発表していたが、実際には56人と訂正した。さらに乗務員6人と保安員1人が乗っていたという。

ラルナカ空港は封鎖され、予定されていた到着便は他の空港に振り分けられた。

エジプト航空MS181便をハイジャックした男の脅しがはったりに過ぎなかったのは、ささやかな安心材料にしかならない。白いかたまりから導線が何本も飛び出していた「自爆ベルト」は偽物だった。

昨年10月のシャルムエルシェイク空港と違い、今回は爆発物がエジプトの空港警備をすり抜けて機内に持ちこまれたわけではない。あの時のロシア旅客機爆発とは違う。それはせめてもの慰めだ。

しかし、キプロス当局が「精神的に不安定」だという乗客が、爆弾に見せかけられるほどの材料をどうやってアレクサンドリアの空港から機内に持ち込むことができたのか?

そして今後、同じように武器を持たない乗客が、自分は本物の爆弾を体に巻きつけているふりをしたら? それはどうやって防止できる?

昨年10月の航空機爆破からまだ立ち直れていないエジプトの観光業は満身創痍だ。今回のハイジャックは、実に泣きっ面にハチの出来事だ。

(英語記事 EgyptAir hijack: Man held after using fake suicide belt)

提供元:http://www.bbc.com/japanese/35923053

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