オトナの教養 週末の一冊

2016年4月10日

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足立倫行 (あだち・のりゆき)

ノンフィクションライター

早大政経学部中退後、週刊誌記者などを経てノンフィクション作家に。近著に『血脈の日本古代史』(ベスト新書)『倭人伝、古事記の正体』(朝日新書)。

 直近の戦場取材は昨年12月。クルド人勢力が制圧したイラク北部のIS(イスラム国)支配地域だった。撮影は無事終了したが帰路で対向車と正面衝突、相手の車は3人が即死し、横田さんも肋骨を3本折ったという。

 「シートベルトがなかったんです。あっちでは人命が軽いというか、死がすごく身近で」

 髭面の童顔を崩し、にこやかに話す。

 1年前の湯川さん・後藤さん殺害事件の際、テレビ番組に連日ゲスト出演していた時もそう感じたが、あまりに温和な印象で、百戦錬磨の報道カメラマンとはとても思えない。

 しかし本書を読むと、26歳で飛び込んだカンボジア内戦から、東ティモール、コソボと紛争地を巡り、アフガニスタンでは10年以上かけてタリバン側とアメリカ軍側の双方に従軍取材。緊迫のシリアにも2度潜入し、IS幹部のインタビューや「首都」ラッカの知られざる内情も報告している。

 活動の軌跡を辿るだけで、押しも押されもせぬ第一級の戦場ジャーナリストとわかるのだ。

 「戦場で一番気をつけているのは?」

 「今なら誘拐されないことです」

 「銃撃ではない?」

 「弾に当たる当たらないは運。けれど、誘拐されるとそれでは済まず、家族、関係者、政府など多方面に迷惑をかけますからね」

 横田さん自身、「身代金交渉はしないで」「(自分の)遺体は現地で処分して」とすでに関係省庁の知人に依頼してある旨、本書中に記しているが、「事態は執筆当時より悪く、外国人は常時狙われる現状」らしい。しかし、そんな危険を冒してまでなぜ「撮りに行かずにはいられない」のか?

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