秋山真之に学ぶ名参謀への道

2009年12月5日

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「百戦百勝ハ善ノ善ナルモノニアラズ。戦ハズシテ敵ヲ屈スル。之ヲ善ノ善ナルモノト謂フ」

 「この屈敵にも、その程度によって決戦・対峙戦・追撃戦・退却戦の四つがある」

 秋山教官の説明に、ある生徒から質問が飛んだ。

 「教官、いったん戦闘がはじまれば、目的は敵に勝つにあり。勝敗の定義は一つで充分ではないですか?」

 秋山教官はにやりとした。

 「いったい、勝つとはいかなる現象か。勝つと負けるでは、どんな違いがあるか。将棋では、王をとれば勝ちとする。この規定により勝敗が決する。しかし、戦争にはそんな人為的規定などありません」

 ヘボ将棋、王より飛車を可愛がりの生徒はうなだれてしまった。

 秋山教官が定義を黒板に書きます。

「負クルモ目的ヲ達スルコトアリ。勝ツモ目的ヲ達セザルコトアリ。真正ノ勝利ハ目的ノ達不達ニ存ス」                       (天剣漫録12)

 秋山教官は戒めました。

 「軍人たる者は、戦って敵に勝つことより、まず戦っていくばくの戦果を収めるか。その目的に留意するのがもっとも必要である。戦果はあたかも草木が春夏に生茂して花開き、その花散りてあと、秋冬に果実を結ぶがごとくです。前半期は決戦の時期で、春花の爛漫たるがごとく、彼我相撃って戦闘の光景ももっとも激烈を極める。しかそこの時期にはまだ多くの戦果をみない。彼我戦いに疲れ、砲声しだいに衰え、あたかも花の散りたるあとのごとき後半期において、勝ちようやく決し、漸次、戦果の収穫をみるのです」

 安易な勝利への期待を戒める秋山教官は、ほとんど悲しげでありました。

 日露戦争の前半、日本海軍は旅順口の封鎖作戦で苦労した。広瀬武夫大佐が壮烈な戦死をとげ、軍神となります。後半期の日本海海戦で、バルチック艦隊撃滅という奇蹟的戦果を得た。

 先の「大東亜戦争」は緒戦の真珠湾作戦こそ華々しかったけれど仇花におわります。秋の豊かな実りはアメリカ軍に獲られてしまった。あの世の山本五十六元帥は、秋山先輩の名文のまえにうなだれるのみでしょう。

 昭和の企業参謀にも忸怩たるところがある。マーケット・シェアーを追い求めた高度成長期こそ華々しかったけれど、昭和元禄花見酒に酔いしれてバブル・バーストとなり、平成の秋の収穫は乏しい。この企業参謀は付加価値生産性の向上を戦果と考えていたのですが‥‥。

 いまとなっては、平成の企業参謀のみなさんにあらたな挑戦をはじめていただくしかない。

 新たな挑戦をはじめるには原点、秋山真之の軍学へもどるのが早道です。急がばまわれ。

 次回は、秋山真之がいかなる心がまえで自らを名参謀に鍛えていったのか。

 そこをみましょう。 
 

◆『甦る秋山真之』(上・下巻)

 

 

 

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