2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月18日

 包括的記事でありながら、オバマが就任以来優先事項にしてきた二つのトピックは最小限にしか取り扱われていない。

 第1はイランとの核合意である。これはオバマが熱意を持ち、そのために他の中東政策を犠牲にした。デニス・ロスなどは、アサドが化学兵器を使った際に「レッドライン」を軍事的に執行しなかったのは、イランとの交渉をだめにしたくなかったからと言っている。オバマはこれをサウジとイラン、スンニ派とシーア派のバランスにつながる戦略的意味があると考えたのではないか。

 第2には2011年、アラブの春の際に、エジプトのモルシのムスリム同胞団とトルコのエルドアンのAKP(公正発展党)を民主化の道具とみなしたことである。これは今から思うと間違いであり、アラブの春を危険な方向にもっていった。

中東への関与低減は正しかったのか

 「オバマ・ドクトリン」を貫く問題は、オバマが中東での米国の「過剰関与」を減らしたのは正しかったのかどうかということである。オバマは「もはや中東は米国の利益にとり、そう重要にあらず」、「米大統領がやれることは限られている」、「米国の介入は米兵の死と米国の信頼性と力の大出血になる」と述べた。

 しかし、中東は重要であり、米国には役割があり、何もしないのは米国の世界での立場を損なう。オバマは3点とも間違っている。米国が引いた後に、ロシア、イラン、サウジ、IS(イスラム国)が入ってきている。そういう世界が米国にとって良いとは思わない。

出 典:David Ignatius‘Obama’s destabilizing candor on the Middle East’(Washington Post, March 15, 2016)
https://www.washingtonpost.com/blogs/post-partisan/wp/2016/03/15/obamas-destabilizing-candor-on-the-middle-east/

*   *   *

 オバマは現職の米大統領であり、まだ来年1月まで任期があります。それにもかかわらず、率直に自分の考え方をアトランティック誌に語っています。ここでは中東に関する部分だけが取り上げられていますが、欧州、北アフリカなどについても発言しています。異例なことです。

 こういうことを今の段階ですることは不適切とのイグネイシャスの意見はその通りでしょう。


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