いま、なぜ武士道なのか

2009年12月4日

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 猫の手も借りたい師走がやってきた。読者のなかには、年内に片付けなくてはならない仕事を抱えている人も多いだろう。しかし、こんなときにこそ、『葉隠』の一節を思い出してほしい。
  「忙しいときに態度が悪くなるのは下人のようで品がなく、真の武人はそういうときこそ丁寧な仕事をするものである。」

 忙しい時は気がせくものである。言葉も乱暴となったり、態度も横柄になったりする。それで、官僚主義といわれたりもする。仕事がたまったり忙しくなったりすると、つい乱れてしまうものである。

役所などにて別けて取り込み居候處に、無心に何か用事など申す人これある時、多分取合ひ悪しく立腹などする者あり。別けて宜しからざる事なり。左様の時ほど押ししづめ、よき様に取合ひ仕るべき事、侍の作法なり。かどがましく取り合ひ候は、中間などの出会ひの様なり。

役所などで特に忙しい時、無遠慮に用事などをいい出す者があると、応対も悪く、腹など立てる者がいる。これは特によくない。このような時ほど気をしずめ、ていねいに応対するのが武士の作法である。つっけんどんに応対すれば下人のやりとりのようである。

 理屈ではこのとおりである。しかし、実際にはなかなかできないことである。毎日毎日反省をしてはこの作法を身につけなければ武士ではない。つまり一級人に求められる倫理とでもいうことができる。現代での例でいえば、さしずめ官庁の窓口にあたる。一部の職員の横柄な応対に腹を立てた経験を一度や二度はもっていることと思う。もちろん立派な職員のいることも事実である。そういう職員は目立たないからわからない。それにひきかえ、権利という名のもとに横暴極まりない市民のいることも見のがしてはならない。それぞれの立場で相手を尊重する気風が本来の日本の伝統ではあるまいか。

◆『いま、なぜ武士道なのか―現代に活かす「葉隠」100訓』

 

 

 

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