2024年4月19日(金)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2009年12月4日

 地価が下落しつづけるのは、土地の利用価値に比べて地価が割高だからに他ならない。しかも、少子高齢化の進展で人口が減少しはじめており、これから世帯数の伸びも減じていく。財政赤字等から公共事業の伸びは見込めなくなっており、金融危機に伴う内外の需要落ち込みで輸出生産拠点などの工場立地も期待できない。

 しかも、戦後3回目の人口集中期を迎えている東京の賃料水準は世界主要都市と遜色ないものの、地方都市の賃料水準は低い【図表3】。国内の不動産市況の三極化は、いままでの人口と経済活力の維持までもが難しくなっている地方の状況をそのまま映し出していると言える。

始まりつつある新たな建設投資循環

 では、どうすればよいのか。理屈では、地価が土地の利用価値を反映しているのだから、地方の経済活力と土地の利用価値を上げればよいということになる。もちろん、理屈通りにすんなりと出来るくらいならば、とっくに実現されていよう。しかし、現在は大きな時代の転機にあり、地方が経済活力を見出す数十年に一度のビッグチャンスが巡ってきていることは見逃せない。

 そのひとつは経済自立と地産地消の要請が強まっていることである。公共事業にも輸出企業の工場立地にも従来以上に頼れなくなることは、地方がますます経済自立を果たさなければならないことを意味している。これは、地産地消が求められているということでもある。

 厳しい要請ではあるが、一方で、温暖化対策が求められる時代にあって、地産地消こそCO2排出が多い輸送の距離を少なくする一番の決め手でもある。家庭やオフィスでのCO2排出を削減することも、全国津々浦々で太陽光発電等クリーンエネルギーの生産を増やす以外にない。これが、地方が活力を見出すチャンスになる。

 同様に、全国例外なしに進んでいる高齢化も地方の大チャンスである。家や街、地域を高齢者に優しい形に作り変えることは待ったなしの要請となっている。この対応は、全ての地方がみずから取り組むことでしか進まないが、これから数十年間全国で大規模に続く取り組みこそが経済活力そのものなのである。

 しかも、ちょうど日本は新たな建設投資循環に入るような時期にある。建設投資循環は、住宅や商工業施設の建て替えまでの期間に相当する形で、約20年のサイクルで訪れる景気循環である。


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