風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

2009年12月10日

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野村 滋 (のむら・しげる)

株式会社コンテンツ・ファクトリー代表

情報誌会社勤務時代に取材で、創立間もない風の谷幼稚園と出会う。その後12年間、風の谷幼稚園の変遷を追い続けている。風の谷幼稚園の教育実践記『4歳の胸のうち』『5歳の誇り』を同社から出版。

水曜日、「今日はこれを作ろうと思うんだ」と、子どもたちの前で円ばんを飛ばせてみせると
「うわぁ!」「すごーい」と目を輝かせ、「作りたい」「やりたい」の気持ちが盛り上がっていきました。
そこで、「円ばんはね、まんまるだと遠くに飛ぶんだよ。じゃあ一体、まんまるってどうやったら描けるのかなぁ」と聞くと、一同沈黙。首をかしげて「わからない」アピールをしてる子もいます。
そんな中、「こうやって描く」と、指で丸を描き始めた慶士くん。
すると今度はみんなも「そうそう」とうなずきニコニコ顔。
「じゃあ、本当にきれいなまんまるが描けるのか、描いてみて」
みんなが注目する中、慶士くんの描いたものは、“まるだけど、まんまるじゃない”ものでした。
すると、今度は「もっとゆっくり描けばいいよ」という美茉莉ちゃん。しかし、「さっきのよりはきれいだけどまんまるじゃない」と、子どもたちです。
「ほかにはどんな方法があるかな」
その問いかけに再び沈黙……。そのとき希海くんが1つの方法を口にしました。
「先生が持ってる円ばんをなぞる」と。実際に先生がなぞって描いてみると、それはきれいなまんまるだということがわかりました。「やったぁ。きれいなまんまるだ!」
喜ぶのもつかの間、「……でも先生のは1つしかないよ」と言うと、今度は「それはイヤだ」と一瞬にして顔色が変わる子どもたちなのでした。             鳥1組 学級通信 「おおばこ」より

 これは年中児クラスの初期カリキュラムである「紙工作」の初日の様子。年少児クラスを修了し、年中児クラスに進級すると、先生の子どもたちへの接し方は少し変化を見せる。前回までご紹介してきたように、原則的な行動を体で覚える段階から、その行動の意味を少しずつ知的に理解させていくのが年中児クラスの大きな目標だ。では、風の谷幼稚園では「紙工作」を通じて、子どもたちに何を教えようとしているのか。学級通信の抜粋を中心に紹介していこう。

基準があるからこそ自分で判断できる

 まず、このカリキュラムの大きな狙いは、子どもたちに「基準を持たせる」ことであるという。基準という言葉を辞書で引いて見ると「物事の判断の基礎となる標準」とあるが、さまざまな取り組みにおいて「どういう状態になれば良しとするのか」という基準を自分の中に持てるよう導いていくのである。今回の「紙工作」でいえば、「まんまる」という状態が具体的な基準となる。「まんまるとはいったいどんな状態か」を理解し、「どうすればまんまるのものを作れるのか」という問題に立ち向かい、そして試行錯誤の結果、その基準をクリアできているかどうかを自分で判断できるようになることが目標だ。

「実際にこのカリキュラムの初期段階の子どもたちは、『先生! これ、まんまる?』『これはどう?』と聞いてきます。その言葉の意図は2通りに分かれます。まんまるが描けたといううれしい気持ちを先生と共有したい思いで言ってくる場合と、自分ではきれいとは思えないけれどもう一度描き直すかそのまま切っていいのかの判断を先生に委ねたい場合です」(滑川教諭)

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