障害者アスリート~越えてきた壁の数だけ強くなれた

2016年5月7日

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 「どんな方でも最初は『車椅子同士で当たるってどういうこと?』って驚かれますね。でも、そこが僕たちがはまっている魅力なんです。車椅子ツインバスケも楽しいのですが、ラグビーにはコンタクトがあって、そこが男としてテンションが上がるところであり、他の競技にはない面白さに繋がっています」

 こうして山口は二つの競技を並行して楽しんでいたところ、「ウィルチェアーラグビーで日本代表を目指してみたら」というチームメイトの言葉によって覚醒し、決意を内に秘めた努力が始まった。

 山口らしいところといえば、努力や必死さというものを表情に出さないところだろうか。試合中も、いたってポーカーフェイスでプレーしている印象が強い。それだけに意志は強いはずだ。その努力の甲斐あって4年後の2013年に「第7回アジア・オセアニアゾーン選手権(南アフリカ・プレトリア)」の日本代表に選出された。以後、同じ障害レベルの選手としのぎを削りながら日本代表の座をキープし続けている。

 「僕たちのようなローポインターと呼ばれる障がいの重い選手でも、ハイポインター(障害の軽い選手)を止められたりするんですよ。そういう点での面白さや爽快感はありますが、まだまだこの競技のこととなると完璧にわかっているわけではないんです。レベルが上がっていくにつれ、やっぱりできないことや、もっとこうしなきゃいけないというのが増えていく感じですね。日本代表になって自分の技術の拙さというものが分かってきました」

 日本代表の合宿や遠征ではホワイトボードとマグネットを使って基本的な攻撃パターンの確認をしたり、それを応用したフォーメーションを考え出したり、戦略、戦術の理解度を深めるという「知」の側面からも徹底して強化を図っていった。

目指すはリオ五輪でのメダル

 そしてウィルチェアーラグビー日本代表は2015年秋に行われたアジア・オセアニア選手権で優勝し、リオデジャネイロ・パラリンピックの出場権を獲得。現在、世界ランク3位という世界的な強豪国に位置するまでになっている。

 山口はリオでメダルを取るための課題をこう語る。

 「それは僕たちローポインターの強化ですね。池透暢さん(Freedom所属)や島川慎一さん(BLITZ所属)、池崎大輔さん(北海道Big Dippers所属)などの日本人ハイポインターの実力は世界的なレベルにあります。ただし、ローポインターがそれに追いついていないのが現状です。海外のローポインターと僕たちではスピードが格段に違います。彼らは圧倒的に速いです。そこが日本代表の課題ですね。それにずっとタイヤを漕いでいられるところも僕たちとの違いです。

 ならば、スピードで勝る相手にどうやって試合で勝つのか、日本代表のコーチ陣が口を酸っぱくして言うのは、「予測と反応」です。相手のほうが速いんだったら、それを予測して先に動けということです。スピードのある海外のチームに、日本は「予測と反応」で上回らなければ今よりも上にはいけません。日本代表の目標はリオでメダルを取ることです。しかし、選手の最終選考が残っているので、まずは僕が日本代表に残ることです」

 とても静かだが、言葉には確かな決意を秘めた響きがあった。山口は現在、日興アセットマネジメント(株)の社員として東京ミッドタウンに通うビジネスマンとしての顔を持っている。「僕がこうしてリオを目指せるのは会社全体でバックアップしてくれるからなんです。それを思うと身が引き締まる思いがします。感謝して、しっかりそれに応えなければなりませんね」


  
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