2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年5月9日

 ハリルザード大使は、イラク、アフガン情勢に詳しい外交官であり、彼の情勢判断は傾聴に値します。ここでのイラク情勢及び対イラク政策についての判断も傾聴されるべきです。

イラクが中東で果たせる役割とは

 イラク人がイランの圧倒的な影響下におかれることよりも、米国との協力関係を望むことは理解できることです。イラクのシーア派はアラブ人であり、ペルシャ人とは民族が異なります。宗派が同一であることと民族が違うことが関係にどういう影響を与えるかは状況によりますが、民族的差異はイラク人とイラン人の関係を微妙なものにしています。イランの強圧的態度もあり、米国がその影響力を再構築する機会がここにはあります。

 ただ、オバマ大統領は、中東での米国の関与を縮小したことを誇りにしており、イラクでの米国の影響力の再構築の機会を利用する気があるかは疑問です。

 中東でのイランの影響力が強くなりすぎることには、サウジを含むアラブ諸国とイランの間の力のバランスを崩し、多くの問題につながる危険があります。地域におけるバランス・オブ・パワーのためには、イラクはイランの勢力に対するバランサーとして一つの役割を果たしうるのであり、米国がイラクを支援し、影響力を再構築することは重要です。

 ただそういう政策はオバマによってではなく、新大統領によって試みられる可能性が大きいです。ただハリルザードが言う「機会」がそれまで存在し続けるかは何とも言えません。

  
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