2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年5月11日

 米国は他国の原発での安全管理の改善のため指導力を発揮すべきである。米国は当該地域でのテロの脅威を正しく評価し、原発の安全システムを確保する訓練を実施し、監視を強化するよう、米国の核物質、技術の輸出相手国に要求すべきである。

 現在の米国法制では、米国が日本を含む外国と、テロリストに関する情報を共有することは禁じられているが、これは変えるべきである。

 テロリストは原発に目を向けている。我々もそうしなければならない。

出 典:Graham Allison & William H. Tobey‘Could There Be a Terrorist Fukushima?’(New York Times, April 4, 2016)
http://www.nytimes.com/2016/04/05/opinion/could-there-be-a-terrorist-fukushima.html?_r=0

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放射性物質を用いたテロの危険も

 原子力発電所に対するテロ攻撃は市民を恐怖に陥れ、政府に打撃を与えるうえで格好の標的であると、テロリストが考えるのは不思議ではありません。原子力発電所に対するテロが現実の脅威になっているというのは、その通りでしょう。

 原子力施設の安全管理については、1970年代から核物質防護として米国指導で重視され、1979年には核物質防護条約が締結されました。当初は、核拡散防止の観点から、核物質の盗難防止が主な目的でした。その後、核テロ防止の観点が重視されるようになり、最近のテロの広がりで対策の必要性が再認識されるに至り、これまで以上の対策をとる必要性が生じました。

 論説は、原子力発電所に対するテロ攻撃の危険に警鐘を発していますが、プルトニウムなど放射性核物質を使ってのテロにも警戒する必要があります。言ってみれば「地下鉄サリン事件」型のテロです。原発に対するテロよりは衝撃度が低いかもしれませんが、実行される確率はこちらの方が高く、現在の核物質防護の対策を精査し、万全を期す必要があります。

 日本については、ほとんどが稼働していないとはいえ、54基の原子力発電所があり、これは世界第3位で、国内に約11トンの分離プルトニウムを保有しています。その他に、再処理を委嘱した英仏に約37トンあります。テロの対象となりうるものが多数、大量にあるわけで、日本の核物質防護体制がIAEA(国際原子力機関)から高く評価されているとはいえ、テロ対策には細心の注意を払わなくてはなりません。

  
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