2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年5月13日

 米戦略予算評価センター(CSBA)のアンドリュー・クレピネビッチ前センター長が、同センターのサイトに3月30日付で「南シナ海長期戦」と題する論説を寄せ、南シナ海問題は重要貿易路の航行の自由にかかわり、米中間の長期的競争の一部である、ベルリンの封鎖や壁建設にトルーマンやケネディがしたような対応をするなど、軍事的に覚悟を持って取り組むべし、と論じています。同人の論旨は次の通りです。

対艦巡航ミサイルや長距離地対空ミサイルが配備されたという南シナ海の永興島(Getty Images)

軍事バランスの変化狙う中国

 孫子は「戦わずして敵の抵抗を破るのが最善」と言った。近代の軍事用語では、決定的な「立場上の優位」を達成すると表現される。中国は孫子に倣い、南シナ海の諸島に戦闘機、レーダー、ミサイルを配備し、軍事化を続けている。中国の短期的な狙いは東南アジア諸国に「立場上の優位」を樹立することである。長期的には彼等の米への信頼をなくさせ、中国の地域秩序構想に従うように軍事バランスを変えることである。

 中国は日本、比、韓国、台湾の戦略的貿易ルートに地位を築こうとしている。中国軍は比、越、インドネシア、マレーシア、シンガポールの近辺に展開している。

 中国が西太平洋の覇権国となることを追求する中で、地域諸国は米国の支援をあてにしているが、米国の対応は不十分である。5年前、オバマ大統領はアジアへの「リバランス」を発表したが、これはレトリックに終わっていて現実にはなっていない。

 2016年、米国は航行の自由作戦を展開、ケリー国務長官は「非常に深刻な話し合い」を北京とすると言っているが、安定した軍事バランスと同盟国の信頼を再確立するためには、もっと多くのことが必要である。


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