百年レストラン 「ひととき」より

2016年5月21日

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菊地武顕 (きくち・たけあき)

1962年、宮城県生まれ。編集者・記者。「E
mma」「女性自身」「週刊文春」「週刊朝日」と、25年以上にわたって週刊誌編集部で働く。著書に『あのメニューが生まれた店』(平凡社)。編書に「日本全国 おいしいものお取り寄せ」(文春文庫)。

 

明治から大正初期にかけ、野心に溢れた人々によって、数多くの料理店が創業された。創意工夫をこらし弛まぬ努力を続けた店は、現在も暖簾を守っている─。

ハイカラ好きの煎餅屋店主が
大正5年に突如、洋食屋に商い替え

「ビーフシチューボルドー風」。前菜等とのセットで2,500円 
コース料理の締めとして最も人気の高いクレープシュゼット

 京都・四条大橋の東側のたもと。歌舞伎劇場の南座と向かい合わせに、古い洋館が建っている。大正15年(1926)の築造以来、同地のランドマークとして愛されてきた。平成8年(1996)には国の登録有形文化財に指定されたほどに、歴史的にも建築学的にも貴重な建物だ。

 この洋館こそが、京都を代表する洋食店「レストラン菊水」。1階は喫茶・軽食で利用できるレストラン&パーラー、2階は本格フレンチを堪能できるレストラン、3階・4階は宴会場兼ダンスホールで、屋上は夏季にビアガーデンとして使われる。

 平日の午後2時、3時といった時間にも、客足は絶えない。ビーフシチューは店が独自に開発した一人用の特殊な銅鍋で供され、テーブル上で温め続けられる。クレープシュゼットは客の前でフランベされ、炎が燃え上がるたびに歓声が─。客本位のサービスが行き届いていることが、この店の魅力だろう。

 創業は建物落成より10年早い大正5年。「もともとは、瓦煎餅屋だったんです」と語るのは、四代目店主の奥村さん。

 「曽祖父の奥村小次郎は、ハイカラ好き、新しもん好きだったそうです。そこで、『ハイカラな館を建て、美味しい西洋料理を食べてもらい、お客様を感動させたい』と思い立ち、煎餅屋を止めて洋食屋を始めたんです」

 当初は煎餅屋を改装した店舗だったが、初代料理長に「天皇の料理番」秋山徳蔵氏の弟子を招聘。正統派の料理を提供した。

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