海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年5月4日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「トランプの変化とクリントンの苦悩」です。4月26日(現地時間)に北東部5州で行われた共和・民主両党の予備選挙は、米長距離鉄道アムトラックで結ばれているため「アムトラック・プライマリーズ(予備選挙)」と呼ばれました。共和党は不動産王ドナルド・トランプ候補が全州で勝利し、次の中西部インディアナ州でテッド・クルーズ上院議員(共和党・テキサス州)をノックアウトしますと、これまで議論されてきた共和党全国党大会での決戦投票の可能性が低くなります。

 一方、民主党はヒラリー・クリントン候補が5州の内、4州でバーニー・サンダース上院議員(無所属・バーモント州)に勝利を収め、指名獲得に必要な2383人の代議員数にさらに近づきました。

 本稿では、トランプ候補の演説における変化と、今回の北東部5州における予備選挙で顕著に現れたクリントン候補の弱点に焦点を当てて述べていきます。

トランプ候補の演説における変化

 ペンシルベニア州予備選挙投票日前日のクリントン候補と筆者(@ペンシルベニア州フィラデルフィア市役所)

 トランプ候補は、共和党全国党大会における決戦投票の対策担当として、政治コンサルタントであるポール・マナフォート氏を採用しました。それ以来、同候補の演説に変化が生じています。

 昨年からトランプ候補は演説の冒頭で、各メディアが実施した世論調査の数字を必ず挙げて、自身の強さをアピールしてきました。ところが、ニューヨーク州ロチェスターやペンシルベニア州ピッツバーグでは、同候補は演説で2つの都市における製造業の激減に関する統計を出し、その原因を北米自由貿易協定(NAFTA)に帰しているのです。そのうえで、同候補は、「環太平洋経済連携協定(TPP)は北米自由貿易協定よりもさらにひどい貿易協定である」と主張しています。

 なぜ、トランプ候補は演説の冒頭を変えたのでしょうか。一言で言ってしまえば、労働者階級の票の獲得が最優先であると判断したからでしょう。同候補は、2008年及び12年米大統領選挙でオバマ大統領が勝利を収めたミシガン州、ニューヨーク州、ニュージャージー州及びペンシルベニア州を奪還すると述べています。12年米大統領選挙においてミット・ロムニー共和党候補が獲得した選挙人206に上の4州の選挙人の合計79を加えれば、過半数の270を超えることができます。極論を述べれば、激戦州の中の激戦州であるオハイオ州、フロリダ州及びバージニア州の3州をたとえ落としても、民主党候補に勝てる計算が成り立ちます。

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