2024年4月25日(木)

Wedge REPORT

2016年5月7日

モノがあふれる時代に必要な共感

 帰国後、ミニ洋蘭の栽培に着手し、07年には妻の名前を冠したネット販売サイト「森水木のラン屋さん」を立ち上げた。だが、最初の2年間は赤字続き。売り上げは10万円程度にしかならなかった。それでも、JAにしか出荷しなかった時とは違い、消費者の声を直接得ることができるようになった。

 苦境は続いた。05年に父親の古い知人である岡山県の蘭生産者から「廃業するので、デンドロビュームの苗を引き取ってもらえないか」と頼まれた。この生産者は、デンドロビュームを母の日の花として出荷させたいと試行錯誤を続けていたが、開花調整がうまく行かず、日の目を見ないまま廃業することになった。周囲の反対にあったが、「思いを引き継ぎたい」と押し切った。07年の母の日に合わせて開花を狙ったが、咲いたのは20%。稼ぎ時の母の日に大損失を出して、従業員給与の支払いが遅れる事態にまでなった。

 それでも10年からはデンドロビュームを計画的に出荷できるようになり、4月に月間売り上げが初めて1000万円を超えた。翌11年には1800万円を記録した。そのころ、宮川氏は先輩にデンドロビュームの経緯を話した。「それはお客さんにも知ってもらうべき」というアドバイスをもらい、テキストベースの動画にして、ユーチューブに投稿した。これが12年5月に8日間で4800万円を売り上げる爆発的なヒットにつながった。宮川氏は「モノがあふれる時代、買ってもらうには『共感』を得ることが必要」と実感したという。

バンダの状態を確認する宮川洋蘭の宮川将人氏 (撮影 Masataka Namazu)

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