2024年4月19日(金)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年5月17日

 昨年の共和党テレビ討論会を振り返ってみましょう。ライバル候補がトランプ候補のキャラクターと「核のボタン」を結びつけて、彼にボタンを任せていいのかと疑問を投げかけた場面がありました。同候補の「危険な性格」と「核のボタン」を関連させた効果的な攻め方でした。

 オバマ大統領は、トランプ候補の名前を直接出さないまでも、核拡散を容認する危険な人物は、大統領になる資格がないというメッセージを原爆が投下された広島から発信できる機会を得たのです。もちろん、広島で過ごした時間を振り返って、ツイッターやフェイスブックでも発信できます。夏の民主党全国党大会における演説で、上のメッセージを発信することも可能になりました。いずれにしても、トランプ候補の日韓核武装容認発言とオバマ大統領の広島訪問が可能にしたクリントン援護のメッセージなのです。

感情移入と涙

 広島訪問に際して、オバマ大統領の人柄についても触れておきましょう。文化人類学で博士号を取得したオバマ大統領の母親アン・ダナムは、オバマ少年に感情移入の重要性を教育しました。アンは、自分が同じことをやられたらどのように思うのかとオバマ少年に問いかけ、彼の感情移入の能力を高めていったのです。オバマ大統領は、記者会見並びに演説で銃乱射事件の犠牲者や元自警団によって射殺されたアフリカ系の少年について語る時に、涙を浮かべ流すことさえあります。

 広島でオバマ大統領が母親からの問いかけを行い原爆被害者に感情移入をした時、たとえ涙を見せても、それは「謝罪」や「弱さ」ではなく、むしろ同大統領の人間性から出たものであるとトランプ支持者や退役軍人には解釈してもらいたいものです。


  
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